研究課題/領域番号 |
23500860
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
寺尾 保 東海大学, スポーツ医科学研究所, 教授 (50183489)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢化社会 / 高地トレーニング / 歩行運動 / 健康増進 / 疾病予防 / 自律神経 / 末梢血液循環 / 動脈スティフネス |
研究概要 |
1.目的:本研究では、中高年者を対象に、高地(低圧低酸素環境下)で2日間の歩行運動を行った場合、運動終了後の翌朝における自律神経系の応答、末梢血液循環及び動脈スティフネスの動態にどのような影響を及ぼすか検討した。2.方法:歩行運動は、低圧室を使用した。被験者には、平地(NE)及び標高1500m(HE)でそれぞれ歩行運動を行わせた。1回の運動時間は、45~60分間とした。運動中は、心拍数、動脈血酸素飽和度(SpO2)及び自覚的運動強度(RPE)を測定した。運動終了後(翌朝)には、自律神経活動、末梢血液循環(加速度脈波加齢指数)及び動脈スティフネス(脈波伝播速度)を測定した。自律神経活動の評価は、心拍変動データを解析(低周波帯域;LF、高周波帯域;HF)し、HF normalized unit(以下HFnu=HF/(LF+HF)×100)を求め、交感神経活動と副交感神経活動のバランスを推定した。3.結果及び考察:1)歩行運動中の心拍数は、HEがNEに比較して、有意に高値を示した。2)歩行運動中のHFnuは、HEがNEに比較して、有意に低値を示した。3)歩行運動中のSpO2は、HEがNEに比較して、有意に低値を示した。4)歩行運動中のRPEは、HEがNEに比較して、有意に高値を示した。5)運動終了後(翌朝)のHFnuは、HEがNEに比較して、有意に高値を示した。6)運動終了後(翌朝)の加速度脈波加齢指数は、HEがNEに比較して、有意に低値を示した。7)運動終了後(翌朝)の脈波伝播速度は、HEとNEの間で、有意な差がみられなかった。以上の成績から、中高年者に対する標高1500mに相当する低圧低酸素環境下における2日間の歩行運動は、運動終了後の翌朝においても、自律神経活動のバランスとして副交感神経が優位な状態がみられ、末梢血液循環を一時的に改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、女性や中高年者が日常生活のレクリェーションにおいて登山やハイキング、トレッキングで高地環境に触れ合う機会も増加してきている。実際の実施期間は、週末を利用することを考えると、2~3日間が限度になるケースが多い。したがって、この実情を踏まえて、本研究では、短期集中型高地トレーニング(平成23年度は2日間)に焦点を絞って、生理的応答を検討した。その結果、短期集中型高地トレーニングでも翌朝に生理的応答(自律神経活動、末梢血液循環)が明らかに変化することを確認できた。したがって、本研究の経過及び成果から様々な実践的な応用研究に発展することができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も2~3日間の短期集中型高地トレーニングに絞って、例数を増やすとともに、自然環境を利用した高地トレーニング(現地での宿泊効果も検討)を行った場合、平地でのトレーニングと組み合わせた場合、短期集中型高地トレーニングを間隔をおいて定期的に繰り返し行った場合などについて、中高年者の健康維持増進及び疾病予防に対する高地トレーニングの有効性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費及び消耗品費が当初の科学研究費明細書に表示した単価よりも購入時は安価であったこと、被験者に学内の教職員を対象にしたことで謝金が支出されなかったことなどから、次年度使用額が生じた。当該研究費を含め、平成24年度に請求する研究費と合わせた使用計画は、本研究を遂行するために必要な設備備品費(パルスオキシメータ、ハートレートモニター、ノートパソコンなど)、謝金(学外の被験者への謝礼)、消耗品費(酵素想定用チップ、パルスオキシメータ用フィンガクリッププロープ及びリストバンド、記録媒体類など)にそれぞれ充てる予定である。
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