研究課題/領域番号 |
23500860
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
寺尾 保 東海大学, スポーツ医科学研究所, 教授 (50183489)
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キーワード | 高齢化社会 / 高地トレーニング / 歩行運動 / 健康増進 / 疾病予防 / 自律神経 / 動脈血酸素飽和度 / 心拍数 |
研究概要 |
1.目的:本研究は、中高年者を対象に、高地(低圧低酸素環境下)で2日間の歩行運動を行った場合、運動中、運動終了後の翌朝における自律神経系の応答について検討した。 2.方法:歩行運動は、低圧室を使用した。被験者には、平地(NE)及び標高1500m(HE)でそれぞれ歩行運動を行わせた。1回の運動時間は、45~60分間とした。運動中は、心拍数、動脈血酸素飽和度(SpO2)及び自覚的運動強度(RPE)を測定した。運動終了後(翌朝)には、自律神経活動(体位変換テストを含む)を測定した。自律神経活動の評価は、心拍変動データを解析(低周波帯域;LF、高周波帯域;HF)し、HF normalized unit(以下HFnu=HF/(LF+HF)×100)を求め、交感神経活動と副交感神経活動のバランスを推定した。 3.結果及び考察:1)歩行運動中のSpO2は、HEがNEに比較して、有意に低値を示した。2)歩行運動中のRPEは、HEがNEに比較して、有意に高値を示した。3)歩行運動中の心拍数は、HEがNEに比較して、有意に高値を示した。4)歩行運動中のHFnuは、HEがNEに比較して、有意に低値を示した。5)運動終了後(翌朝)のHFnuは、HEとNEで有意差がみられなかった。しかし、6名中4名がHFnuで高値の傾向を示した。6)体位変換テスト時の自律神経活動は、6名中2名がHE及びNEのいずれも座位から起立・立位まで適切に反応していた。その他の4名は、NEに比べてHEで座位から起立・立位まで適切に反応していた。7)自律神経機能の総合評価は、平均点でHEがNEに比べて、高得点を示した。以上の成績から、標高1500mに相当する低圧低酸素環境下における2日間の歩行運動は、運動終了後の翌朝においても、副交感神経活動が優位な状態がみられ、自律神経活動のバランス及び反応力を一時的に改善することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
近年、女性や中高年者が日常生活のレクリェーションにおいて登山やハイキング、トレッキングで高地環境に触れ合う機会も増加してきている。実際の実施期間は、週末を利用することを考えると、2~3日間が限度になるケースが多い。したがって、この実情を踏まえて、本研究では、短期集中型高地トレーニング(2日間)に焦点を絞って、運動中、運動終了後の翌朝における自律神経系の応答について検討した。その結果、短期集中型高地トレーニングでも運動中はもとより、運動終了後の翌朝に自律神経活動が明らかに変化することを確認できた。したがって、本研究の経過及び成果から様々な実践的な応用研究に発展することができると考えている。 さらに、予備実験として自然環境を利用した高地トレーニング(標高1400mの東海大学嬬恋高原研修センターを拠点として宿泊効果も検討)の基礎資料も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も2~3日間の短期集中型高地トレーニングに絞って、低圧室の例数を増やすとともに、平成24年度の予備実験(自然環境を利用した高地トレーニング)で得られた基礎資料をもとに、現地(標高1400mの東海大学嬬恋高原研修センターを拠点)での宿泊効果も含めて、中高年者の健康維持増進及び疾病予防に対する高地トレーニングの有効性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品費及び消耗品費が当初の科学研究費明細書に表示した単価よりも購入時は安価であったこと、被験者に学内の教職員を対象にしたことで謝金が支出されなかったことなどから、次年度使用額が生じた。当該研究費を含め、平成25年度に請求する研究費と合わせた使用計画は、本研究を遂行するために必要な設備備品費(パルスオキシメータ、ハートレートモニター、唾液アミラーゼモニターなど)、謝金(学外の被験者への謝礼)、消耗品費(唾液アミラーゼ測定用チップ、電子体温計、記録媒体類など)にそれぞれ充てる予定である。
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