研究課題/領域番号 |
23500862
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
大石 修司 東京医科大学, 医学部, 教授 (00322462)
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キーワード | 酸化ストレス / 過酸化脂質 / 窒素化ストレス / ニトロ化チロシン / 慢性閉塞性肺疾患 / 呼吸リハビリテーション |
研究概要 |
【目的・方法】本研究は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)における包括的呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)の効果・意義を従来の運動生理学的な解析に、酸化ストレスおよび窒素化ストレスに関連する生体バイオマーカーの解析を加えることにより、全身性炎症性疾患としてのCOPDへの呼吸リハの効果・意義を明らかにすることを目的としている。対象は、前年度より増加して、安定期COPD患者14名である。内訳は、閉塞性換気障害でstage II 1名、stage III 7名、stage IV 6名で、平均年齢は66.7歳であった。リハビリ前およびリハビリ後(10~12週後)に、呼吸機能検査、6分間歩行試験(6MWD)を実施し、また酸化ストレス・マーカーとして過酸化脂質(TBARS)を、さらに窒素化ストレス・マーカーとしてニトロ化チロシン(NT)を測定・評価した。運動療法は、リラクゼーション、ストレッチ、呼吸法、20分歩行(6MWDの70%に歩行速度を調整)、上肢・下肢の筋力トレーニングなどからなる。【結果・考察】呼吸機能検査では、肺活量、努力肺活量、1秒量、%予測1秒量に有意な変化は見られなかった。一方、6MWDは、(リハ前)269.9mから(リハ後)320.3mと平均で約50m伸び、有意に歩行距離が伸びた。さらに、血清TBARSは、(リハ前)4.75nmol/mlから(リハ後)3.83nmol/mlと有意に軽減していた。一方、血清NTは、リハ前後でそれぞれ14.1 nmol/mlと12.5 nmol/mlであり、有意な変化は見られなかった。したがって、COPD患者への包括的呼吸リハビリテーションは、呼吸機能の改善なしに運動耐容能を改善し、さらに酸化ストレスを軽減することが示唆された。しかし、今回の検討では、酸化・窒素化ストレスの標的となる生体分子の相違により、その影響が異なる可能性が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸リハビリテーションの導入数が若干予定より少ないが、比較検討するための症例数は確保できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
包括的呼吸リハビリテーションを積極的に継続し、リハビリテーションの効果を次年度も今年度同様に酸化・窒素化ストレスの面から追及する。とくに次年度は、今年度の結果を踏まえて、効果を重症度別に評価できる症例数に達した時点で、酸化・窒素化ストレスに関連する炎症性物質(サイトカインなど)や抗炎症性物質を検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
COPD安定期および包括的呼吸リハビリテーション導入前後の酸化ストレス・マーカー(過酸化脂質、酸化DNA)、窒素化ストレス・マーカー(ニトロ化チロシン)および酸化DNAを測定する。また、抗酸化酵素・物質(superoxide dismutase (SOD), glutathione peroxidase (GPX), catalase (CAT)、グルタチオンなど)をELISA法用いて、さらに金属イオンの還元能力を指標とした抗酸化能および酸化ストレスの測定装置(Fras4)を用いて測定検討する。また、COPDと酸化・窒素化ストレスとの連関があると思われるサイトカイン(TNF-α、IL-6, IL-8など)のうち、上記の解析結果からより関連性があると思われるものを測定検討する予定である。
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