FGF23およびオステオカルシン(OCN)は骨細胞から分泌され、ホルモン様にカルシウム・リン代謝および糖・脂肪代謝にも影響を与えていることが報告されている。本研究の目的は、メカニカルストレスを骨に加える運動トレーニングが、これらの物質の血中濃度に与える影響、および全身のカルシウム・リン代謝などへ与える影響を観察することである。 本研究ではラットを用い、トレーニング様式としてはジャンプトレーニングを用いた。初年度においては、短期間のトレーニング期間中の血中FGF23とOCNの動態を観察した。若齢の雄性ウィスターラットをジャンプトレーニング群とコントロール群に分けて経時的データを得た結果、血清OCNについてはジャンプトレーニングの影響は観察されなかったが、血清FGF23についてはトレーニング開始1週間後以降において低下する傾向がみられた。次年度の研究においては、同条件で4週間のトレーニング期間と2週間の脱トレーニング期間を設けて血清FGF23の動態を観察した。初年度の結果に反して、血清のFGF23濃度にはトレーニングの影響は検出されなかった。初年度と結果が異なる理由として、血清FGF23の日内変動が考えられた。 最終年度においては採血時間を朝に9時に設定して、2週間のトレーニング実験を行い、FGF23および詳細なリン・カルシウム代謝関連の測定を行った。その結果、トレーニングにより血清FGF23が低下すること、血清無機リン濃度、血清カルシウム濃度も低下することなどが明らかとなった。 本研究の結果、メカニカルストレスが骨に加わる運動は、血清無機リン濃度を減少させることにより骨細胞からのFGF23分泌を抑制する可能性が強く示唆された。運動が骨へ与える影響は局所的であるが、全身性のリン・カルシウム代謝にも影響を与えていることが明らかとなった。
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