研究概要 |
LDL受容体ファミリーであるLR11(LDL receptor relative with eleven binding repeats)は動脈硬化巣の内膜平滑筋細胞に特異的に発現し動脈硬化を進展する分子として同定された。LR11は細胞膜に存在するのみならずプロテアーゼにより分断され可溶性受容体として放出され、冠動脈疾患血清で高値を呈することも報告されている(J Clin Invest. 118:2733-46, 2008)。今年度はヒト2型糖尿病、ならびに糖尿病腎症患者を対象とした血清LR11濃度を測定し、糖尿病性血管障害とLR11との関連を検討した。測定は、健常者(H) 36名(男性(M)/女性(F)=20/16)、明らかな腎症のない2型糖尿病患者(T2DM) 66名(M/F=47/19)、腎症2期T2DM(DN2) 35名(M/F=26/9)、腎症3期T2DM(DN3) 36名(M/F=28/8)を対象とした。血清sLR11濃度を従属変数とした回帰分析では、単回帰分析、重回帰分析ともに年齢、BMI、ALTと有意に関連し、重回帰分析における年齢、BMI、ALTのβ値はそれぞれ0.242, 0.280, 0.181であった。一方、性別、年齢、BMIにて調整後の血清sLR11濃度はHと比してT2DM, DN2, DN3で有意な高値を示した。糖尿病腎症病期2期以降を状態変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った結果、血清sLR11は有意に糖尿病腎症の発症増加に関連した(p=0.008, odds ratio: 1.16, 95% confidence interval: 1.04-1.30)。血清sLR11の変動は糖尿病腎症の発症・進展に関連する可能性がある。
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