研究概要 |
LR11は動脈硬化巣の内膜平滑筋細胞に強発現する1回膜貫通蛋白質であり、integrin/uPAR複合体を介して平滑筋細胞の遊走に関与する。近年、LR11がプロテアーゼにより分断された可溶性LR11(sLR11)が血液中に存在することが報告され、冠動脈疾患や増殖性網膜症患者血清で高値を示す。最近、より高感度なsLR11 ELISA測定系が開発・市販されたこともあり、新たに収集した臨床検体を含めた2型糖尿病患者(T2DM)の血清sLR11濃度を測定し、糖尿病腎症(DN)とsLR11との関連を解析した。測定対象は、対照群(H, 当院人間ドック受診者) 39名(57.3±7.3歳(Mean±SD, 以下同様), 男性(M)/女性(F)=24/15)、当院糖尿病内分泌代謝科に通院中のT2DM群 38名(61.1±6.8歳, M/F=28/10)、DN2期群 34名(58.3±10.1歳, M/F=24/10)、DN3期以降群 53名(60.5±7.1歳, M/F=39/14)とした。H, T2DM, DN2, DN3の血清sLR11濃度はそれぞれ8.0±2.3、9.0±3.0、10.2±3.8、10.5±3.7(ng/ml)となり、Hと比してDN2、DN3で有意に上昇した。多変量解析において、sLR11(β:0.22, p=0.002)、罹病期間(β:-0.22, p=0.002)、SBP(β:0.17, p=0.019)、HbA1c(β:0.22, p=0.008)、eGFR(β:-0.24, p=0.028)がlogACRの独立した規定因子となった。ロジスティック回帰分析の結果、sLR11、HbA1c、Creは糖尿病腎症の有意な危険因子であった(OR=1.18, 95% CI:1.02-1.36, p=0.026)。血清sLR11の変動はDNの発症・進展と関連する可能性がある。
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