本研究課題は家政学及び生活科学論が果たしてきた社会関係資本形成、リーダーシップ育成機能の再考、「日本型の家政教育・家庭科教育」の再評価を目指すものである。検討にあたり3つの枠組み、1.「国民の生活をよりよくする」という思想的系譜・現象の整理、2.学校教育、社会教育における問題解決型の学習とリーダーシップ育成に関わる教育実践の分析、3.学校教育、社会教育が果たす公益的な社会参加活動及び社会関係資本形成機能の現状分析、を設定した。 平成26年度は「枠組み1」について、昭和~平成の生活改善にかかわる文献資料の収集を行った。これら生活改善事業と家政学に関する資料をもとに、昭和中期頃における家政学を通した生活改善への論考について論文化した。また、日米比較による雑誌メディア(生活情報誌)における生活改善への啓蒙、“理想的ライフスタイル像”の提案等、メディアが果たす間接的リーダーシップについて、口頭発表を行った。 次に「ライフスタイルと消費の在り方」について日(米)の家庭科教育学ではどのように能力形成(目標設定)がなされ、課題化・実践化が図られているかを検討し、口頭発表した。 (枠組み2)。 「枠組み3」では、高齢期の人々に焦点を当て、(1)「ものづくり」を通し地域社会の人々との関係性を形成した活動分析、(2)高齢期にある人々への政策的な「生きがい」創出事業の分析(公益的な社会参加活動の分析を含む)、を実施した。(1)については、東日本大震災で自らの日常生活が大きく損なわれた方々の「ものづくり」を組織的に実践する活動に注目した。活動の要を担う“ゆるやかなリーダー”が存在することで、人々の孤独、不安の助長を防止することが明らかとなった。(2)については、政策的に提示された「アクティブシニア」像と地域社会におけるリーダーとして彼らが期待されたことについて考察し、学会で発表した。
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