初年度に得られた成果としての地域密着型特養における平面計画上の分析(ユニット数が奇数で小規模であるため運営費がかさみ余裕のある計画が困難なこと、他サービスの併設により大規模化し地域密着の利点が失われること)や、コストマネジメント(土地建物費用が抑えられている事業所ほど経営に無理がないこと、しかし郊外に立地する母体施設との連携強化のために地域密着型特養も郊外に建設する傾向があること)を踏まえ、次年度では、敷地利用の分析、建築コストの情報収集を行った。 敷地利用については、市街化区域よりも市街化調整区域の方が計画自由度は高かったが、ハード(環境整備)面とソフト(運営)面での地域密着性については、分けて検討する必要性があるとの示唆を得た。イニシャルコストに影響を与える要素として、土地取得については法規制(2007年都市計画法。開発許可を2000㎡以下)、建設については構造、木造化の影響が推察された。 これらを踏まえ、本年度では「地域密着性」の再評価について、特に運営面に着目して行った。地域密着性の達成度について、初年度、次年度と同様の施設に対し、アンケート方式で達成度調査を実施した。運営者、家族、地域住民に同内容を尋ね、その差異を分析した。項目立案については、既存の地域密着型サービス(グループホーム、小規模多機能居宅介護)を参照した。その結果、地域密着の理念については地域住民にも浸透しているものの、地域住民も交えた会議運営や行政も交えた連携については評価の差異が見られ、今後の運営方法に課題を残すこととなった。 本研究における研究期間全体を通じた意義については、以下の通り。 ソフト(運営面)、ハード(環境整備)の両側面から施設の地域密着性について分析し、しかもハードについては、立地、敷地利用、建築計画等さまざまなスケールを対象としそれぞれの課題について整理したことである。
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