研究課題/領域番号 |
23500879
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 哲 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10293888)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者 / 歩行 / 休憩 / 中心市街地 / 街路 / 感性評価実験 |
研究概要 |
本年度は、高齢の来街者が中心市街地を散策途中に、座りたいと評価するベンチ及び付帯空間の構成要素の組合せ規則およびその時間(分)を、CADで作成したベンチ・付帯空間を現地写真に合成したスライド映写画像を用いた感性評価実験によって明らかにした。京都市の中心市街地の現地踏査から、ベンチの維持・管理を民間に託すことにより現時点でも設置可能な場所、法令・条例上、ベンチの設置は現時点では適わないが、今後自動車の流入制限等により設置を考え得る場所を合計9種類選定した。これに座面や断面の形状、色、背もたれの有無や高さ、日よけや植栽、ベンチ前の人通りなど含めて15項目、63の構成要素でごく一般的なベンチを構成し、合計90枚の画像を作成して感性評価実験を行った。被験者には、中心市街地への来街者を想定し、京都以外の都市居住、山間部居住の高齢者、自立歩行可能なデイサービス利用者とした。約半数で0分が回答され、座ってよいとの回答の約3/4が5分以下との回答であった。ラフ集合による分析から、1分または5分座ってよいベンチは、都市部、山間部の高齢者は、幅2m程度の建物余地へ、デイサービス利用者は、商店街の中への設置が最も多く抽出され、全グループで塀沿の車道が続いた。ベンチの構成要素では、都市部の高齢者は、座面の垂直断面が丸形の浅く腰掛ける棒状のベンチが選ばれた。座りたくないベンチは、都市部ではマンション前の私有地、山間部では寺前の私有地、デイサービス利用者は公衆便所前の歩道への設置が抽出され、人通りが少ないとき全グループで共通して座りたくないとされることなどを明らかにした。歩行休憩用のベンチの十分な数の整備には時間を要する。高齢者が座ってよい、と考える場所が限られ、着座時間によっても選ばれる場所やベンチ・付帯空間の構成要素が異なるとの知見は、これらのベンチ設置の計画に資する重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高齢の来街者が中心市街地を散策途中に、座りたいと考えるベンチ及び付帯空間の構成要素の組合せ規則およびその時間(分)を、CADで作成したベンチ・付帯空間を現地写真に合成したスライド映写画像を用いた感性評価実験によって明らかにする、との目的は達成した。調査の被験者に他地域からの来街者として都市部居住の高齢者、山間部居住の高齢者、自立可能なデイサービス利用者の三者を選定した実験が行えたこと、その評価傾向の違いを抽出できたことは、新たな知見であり評価できる。一方、年度当初には、飲食店のベンチも含めて想定していたが、高齢者の歩行中には短時間の休憩が多くなること、このため、飲食店のベンチを利用することは想定されにくいこと、また、民地の小規模余地へのベンチの設置や、現行法令上設置が不可とされる場所も今後はベンチの設置が考えうるため、その検討が必要との判断から、研究を進める過程でこれらの土地を対象とした実験とすることと方針を改め、飲食店のベンチは除外した。このため使用してよいと考える出費額については実験では問わないこととした。この点が交付申請書の目的部分に記載した事項との相違点である。2年度目に実施する高齢者の中心市街地での歩行経路調査の準備は1月から始めており、現在、調査票の作成をほぼ終え、調査地点での調査許可、フィールドでの調査拠点となる会議室の予約など諸処の準備作業を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目は、京都の中心市街地で、高齢の来街者の歩行移動経路、その選択理由、歩行休憩場所の選択とその理由などを、現地でのヒアリング調査によって明らかにする。このための調査を梅雨入り前の5月末と、初秋の10月と気候がよく来街者の多い時期に計画しており、現在5月の調査を準備中である。調査時間は11時から18時まで、中心市街地の人通りの多い地点10箇所を選定し、往来する高齢の来街者へのヒアリングを行う。調査員は、調査拠点での資料整理を含めてローテーションを考えており、1回の調査につき18人×2日×7時間を想定している。ヒアリング事項は通行中に5-6分で回答できる内容とし、1地点で1時間5-6人の高齢者からのヒアリングを想定している。これを4月中に実施する予備調査にて確かめる予定である。以上の調査により、中心市街地で選択される歩行経路が明らかにされるため、優先的に歩行休憩のベンチを整備すべき経路とその場所の可能性を明らかにすることが出来ると考えている。調査員には、この調査を手始めに共同研究を計画しているグループとその大学の学生を予定しており、現在その交渉を進めているところである。調査で得た資料はその後、分析用にデータをコーディングする。この作業を、作業員を集めて調査後1ヶ月を目処にした作業完了を計画しており、その後2ヶ月間に分析を進めることと考えている。この間に、初年度の成果を日本建築学会計画系論文集などへ投稿することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
2回の調査合計約45万円×2回=90万円(調査拠点となる会議室のレンタル費用=約7万円×2回、調査時レンタルPC=3台×2日=約3万円×2回、調査備品4万円×2回、調査員への謝金18人×2日×7時間×1200円=302400円×2回)2回の調査データ処理合計672000円(データ処理謝金4人×10日×7時間×1200円=336000円×2回)日本建築学会参加旅費3万円×3人=9万円、日本都市計画学会参加旅費10万円×1人=10万円、中心市街地への調査打合せ旅費4万円日本建築学会計画系論文集への投稿掲載料10万円文房具代(コピー用紙、トナー、インク)15万円、書籍代4.8万円
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