研究課題/領域番号 |
23500879
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 哲 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10293888)
|
キーワード | 高齢者 / ベンチ / 中心市街地 / 歩行 / 休憩 / 完成評価 |
研究概要 |
中心市街地は高齢者にとっても訪れやすい場所であることが望まれる。このため歩行経路上へのベンチの設置は重要であるが、そのための余地の少ない京都の中心市街地では、民間の私有地など小さな空きスペースなど現在利用されておらず余地として残る場所への設置を考える必要がある。本年度は、京都の中心市街地での、高齢の来街者の歩行経路、どの場所のベンチであれば座ってよいと考えるか、その選択理由を歩行中の高齢者千名からヒアリングしたデータを基に分析した。歩行途中にベンチに座りたいと考えるのは約6割強であった。また、ヒアリングに提示した、9種類の写真(計18枚)のうち、商店街の中、寺の前の私有地、商店街前の幅3.5mの歩道などがよく選ばれていた。ベンチの選択の理由としては、買い物途中に座れる、ゆっくり座れそう、静か・落ち着いた雰囲気である、などが選ばれ、賑やかで楽しそう、車が少なそう、などの理由は選ばれていない。これに対し、どこでもよいという回答も7%あった。歩行経路は対象とした中心市街地のうち、東部にある南北幹線となる商店街、南部、北部にある東西幹線となる商店街が主な歩行経路となっていた。これと交差点毎の通行量から、歩行経路の中心を明らかにした。また、歩行時間は平均2時間弱、距離は800m弱の歩行であった。以上のデータを基に、歩行者が30人以上いた200本の道路毎によく選択された休憩空間をコレスポンデンス分析によって明らかにした。さらに、そのような休憩空間として利用できる場所が当該道路にあるかどうかを、市街地の道路状況から抽出することができた。例えば、9種類の類型のうち、幅2m程度の建物余地へのベンチの設置では、対象中心市街地の西部に該当する箇所が多くなることをその選択理由とともに明らかにした。以上、対象中心市街地で高齢者の歩行が多く、よく選ばれる休憩空間の種類と整備の可能性を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は散策休憩実態調査の実施を計画していた。京都の中心市街地を歩行する高齢の観光客・買物客を対象に、散策経路や散策開始・終了時刻、休憩したいと考える場所等を道路でヒアリングし、地図へ記入して得たデータを分析するとの計画であった。5、10月の気候の良い時期の週末に合計1060名の高齢の歩行者に上記ヒアリングが実施できた。これを分析して高齢の来街者の歩行経路、休憩したいと思う場所、その理由の三者を分析し、高齢の来街者が望むベンチの設置空間を明らかにし、これに該当する場所を抽出することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
3年度目は、京都市の中心市街地に位置する商店街の連盟である商店連盟中京東支部の16商店街、1400店舗の経営者、店長を対象として、自店舗前に通行客対象の歩行休憩用のベンチの設置の可否についてアンケートする。2年目の高齢者の歩行調査より、高齢者の歩行幹線となっているのが商店街であり、商店街の中での歩行休憩の希望が多いことから、このアンケートは重要な意味を持つ。個店毎の業種や営業年数、営業時間帯、設置ベンチの形や固定か否か、清掃や居座りへの巡回指導の希望の有無などを問う。以上は上記連盟を通じてのアンケートとするため回収率が高くなると考えられる。これらのデータコーディングに1週間程度を予定する。以上で得たデータを基に、通行客を対象としたベンチ設置の意向について分析し、設置許容層と設置非許容層の特徴を分類する。 一方で、同時期に、歩道などへのベンチ設置について消防や警察、および市の都市計画局でベンチ管理についての問題点をヒアリングする。緊急車両の通行阻害、歩行時の衝突などが危惧されてベンチ設置に対する許可が消防や警察からおりないことが多い。ベンチ設置における問題点を関係各主体へのヒアリング調査から明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
日本建築学会大会参加旅費10万円×1人、日本都市計画学会学術研究論文発表会参加旅費5万円×1人、調査対象商店街への調査打ち合わせ旅費合計5万円、日本建築学会計画系論文集への投稿掲載料10万円、データ処理作業協力謝金6人×5日×7時間×1200円=25.2万円文房具代(コピー用紙、トナー、インク)10万円、書籍代4.8万円
|