研究課題/領域番号 |
23500883
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
八幡 彩子(谷口彩子) 熊本大学, 教育学部, 准教授 (90259763)
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キーワード | 家政学史 / 小学校家庭科 / 家政学原論 / 専門性 / 鹿内瑞子 |
研究概要 |
平成24年度は、「鹿内瑞子旧蔵資料」をもとに、昭和30年代~40年代における小学校家庭科の施設・設備の充実過程について、資料収集と分析・考察を行った。おもな研究成果は以下の通り。 (1)学習環境の整備施策に関わる文部省の小学校家庭科の施設・設備の充実にむけた動きは、小学校家庭科が教科として存続する見通しが立った昭和30年代~40年代にかけて検討が進められた。 (2)小学校に先立って、中学校・高等学校の家庭科の施設・設備については「産業教育振興法」(1951)の対象とされ、「同施行令」(1952)で「基準」が示された。小学校家庭科については、教科としての存続が決定した後に中学校の「基準」をもとに文部省の学校施設基準調査会による検討が始められた。 (3)小学校家庭科の施設・設備に関する文部省による最も早い基準については、『施設月報』(1955年9月号)において、家庭科の施設・設備整備の方針が示された。さらに、『施設月報』(1956年特集号)では、18学級以上30学級の場合、被服・調理兼用の家庭科教室1室等があればよいとされ、教室の広さ等の基準が示されている。 (4)「鹿内瑞子旧蔵資料」には、こうした文部省の「基準」と前後して、昭和40年代までに、各都道府県の教育委員会や小学校家庭科研究会が独自に行った小学校家庭科の施設・設備の整備状況に関する資料が含まれている。これらによると、昭和40年代に至るまでその整備は難航したとみられる。 (5)鹿内瑞子ほか(共著)『小学校家庭科 施設・設備の整備とその活用』東洋館出版社(1974)は、戦後新設された小学校家庭科の施設・設備の整備に関わった鹿内氏の教育行政の集大成と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、平成24年度は、昭和50年代までの小学校家庭科に関する文部省の教育課程行政を中心とした資料の収集と検討を行う予定であったが、年代が新しくなるにつれて、所蔵図書館における資料複写の制約等により、資料収集が遅れてしまった。 また、当初の予定では、小学校家庭科の教育課程の変遷を中心に資料収集を行う予定であったが、昭和30~40年代における小学校家庭科に関する施設・設備の充実施策に関する検討も、本研究において看過できない重要な意義を有することが明らかとなったため、当初の計画では分析対象に予定していなかった資料を急遽収集することとした。 その結果、とりわけ昭和50年代の小学校家庭科に関する教育課程行政に関する資料の収集と分析が予定より遅れたものである。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集が遅れている昭和50年代における小学校家庭科の教育課程行政の変遷に関する資料収集に急ぎ取り組みたい。 予定通り、本年5月の日本家政学会年次大会では研究成果の発表を行うので、そのあと、これまでの研究成果をふまえて、研究論文の執筆に精力的に取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、資料収集が遅れている昭和50年代における小学校家庭科の教育課程行政に関する資料収集ならびに研究成果のまとめ(論文執筆)を中心に研究を進める。研究計画と関連づけた研究費の使用計画は以下の通り。 (1)平成24年度の研究成果をもとに、(社)日本家政学会年次大会において研究発表を行うとともに、(社)日本家政学会誌に論文を投稿する。(研究発表旅費、論文投稿料等) (2)「鹿内瑞子旧蔵資料」をもとに、昭和50年代の小学校家庭科に関する資料収集を、国立教育政策研究所附属教育図書館において行う。(資料収集旅費、複写費など) (3)これまでの研究全体の総括として、鹿内瑞子氏が小学校家庭科に関する教育課程行政に果たした役割ならびに鹿内氏が小学校家庭科を担当する教員にどのような専門性が必要だと考えていたのか等に関する考察を行い、論文にまとめる。(文献費、論文投稿料等など)
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