研究課題/領域番号 |
23500886
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
所 道彦 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (80326272)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会保障 / 家計 / 子ども手当 / 保育サービス / 国際比較 |
研究概要 |
近年の政策動向のレビューを文献研究によって行った。リーマンショック以降、各国で子どもに対する経済的支援策の見直しが行われており、その方向性を探った。特にイギリスでは、大幅な財政カットの方針のもとで、福祉国家の看板プログラムである普遍主義的児童手当の改革が進められており、所得制限の導入が予定されている。一方、周知の通り、日本においても子ども手当の見直しが進み、2011年の10月以降、給付が年齢別に重点化されたのをはじめ、2012年度からは所得制限が導入されることになっている。2か国における普遍主義的給付の見直しは、国際比較の上でも注目される動向となっている。ただし、両国における手当の社会的な位置づけ等、制度改革の背景についてさらに歴史的考察も含めた検証が必要になっている。2012年度は第1回目の海外調査を行った。イギリスで海外調査を行いヨーク大学ブラッドショー教授からヒアリングと比較研究のためのデータ交換、共同論文の打ち合わせを行った。イギリスの現在の連立政権による子ども手当改革と日本の子ども手当の迷走との間の比較の意義を確認し、今後の子どもに対する経済的支援策の国際比較研究の手法、時系列的な一国(各国)研究の枠組みを検討することができた。モデル家族を用いたシミュレーション分析において、水平的再分配度に加えて、公的扶助ラインとの比較による評価研究を行うことの必要性を新たに検討することができた。日英両国の政策変更は潜在的に各国に大きな影響を与える可能性があり、普遍主義的給付の将来を見据えた研究が重要となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、子育て支援策の現状を家計のレベルで比較検証し、その実質的価値を明らかにすることを主要な目的とする。そのためには、子育て支援策の動向と合わせて、稼働所得の動向についても把握する必要がある。現時点では、文献の収集等を行っているが特にヨーロッパにおいてはこの2~3年の経済状況の変動の幅が非常に大きく、直近の情報を入手するのにやや苦労している。一方、一度目の海外調査によって、イギリスの政策動向の最新情報を得るとともに、今後の比較の枠組について意見交換し、家計のシミュレーションを行うための基盤づくりに着手できた。可能であれば、他国についてもヒアリングを行いたかったが、日本の震災等の影響もあり、次年度以降に実施することとした。特に、これ自体は大きな問題はなく、ヨーロッパの経済情勢が少し落ち着いてからの方がいいと判断している。総じて目標達成が可能なスケジュールでプロジェクトは進行している。
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今後の研究の推進方策 |
家計のシミュレーションの設定を行う。特に、公的扶助水準との相対的数値によって、子育ての経済的支援策の価値を測定するという方法について、日本に適用した場合の問題点、特に最低賃金と比較して生活保護水準が高いことが問題になっていること等も含めて、理論的な限界をよく検討したい。イギリス以外の国でのヒアリング調査を行い、政策動向とその背景について知見を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
文献研究のための資料購入、データの打ち込みおよび管理のための人件費、海外調査の費用等を計上している。
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