平成25年度は、イギリスとスウェーデンについて2回の海外調査を行った。9月に行ったイギリスでの調査では、ブラッドショー教授(ヨーク大学)、ペイジ教授(バーミンガム大学)からヒアリングを行った。連立政権誕生後、子育て支援策について、伝統的な家族に対する価値観に基づく政策の方向性が打ち出されようとしている兆候が確認できた点、社会保障改革では、システムの統合の遅れや住宅手当政策の変更によって大きな影響が出ている点が明らかとなった。家計面から子育て支援策を分析するためには、住宅コストの分析が必要であるが、そのための方法論について現地の研究者たちの議論の大枠を理解することができた。3月に行ったスウェーデンの調査では、ストックホルム大学社会科学研究所のネルソン博士からヒアリングを行った。近年の先進国(日本含む)における児童手当の選別主義化の傾向についての評価、社会保障給付からタックスクレジット化への動向についての評価、スウェーデンにおける子育て支援策の見通し、家計分析をベースとする今後の国際比較研究の手法と発展性を中心に議論を行った。WU全体として、タックスクレジット化、選別主義化が進行している。共働きモデルへの転換については、スウェーデンでも20年近くかかっており、日本の場合もその方向へと進むのではないかという指摘であった。また、普遍主義的な手当が定着している点は、日本と大きく異なる点である。家計単位でみた場合に、スウェーデンでは普遍主義的な手当が重要な位置を占めている点が確認できた。
|