研究課題/領域番号 |
23500891
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研究機関 | 植草学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 文子 植草学園大学, 発達教育学部, 教授 (60215837)
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研究分担者 |
内野 紀子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (80253235)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 意思決定能力 / 調理実習 / Working Memory / 特別な支援を必要とする児童・生徒 / 通常学級の児童・生徒 |
研究概要 |
本研究は、調理実習時における「段取り」の能力に焦点をあて、特に普通学級における児童・生徒だけでなく、特別な支援を必要とする児童・生徒を対象にした意思決定能力育成について、そのメカニズムを、調査、授業実践、脳機能の側面から実証し、これからの家庭科カリキュラムへの提言を行なうことである。 本年度の研究計画は、(1)諸外国及び日本における食教育ー特に調理学習と意思決定能力の関連性の視点からシラバス分析を行なう、(2)普通学級および特別の支援を必要とする児童・生徒を対象にした調理学習における「段取り・・予測をたてて計画・実践する」に関する調査をして実態を把握することであった。 (1)のシラバス分析は、抽出した国々と日本のシラバスにおける特に調理学習と意思決定の関連性について分析・検討し、課題を整理した。(2)の実態把握では、まず、特別支援学級において、家庭科及び家庭科関連教科がどのような内容でどのくらい実施されているかを把握し、課題を明らかにすることを試みた。研究方法は、C県の全ての特別支援学級を対象とした全数調査を行なった。結果は、小学校の特別支援学級では34%が家庭科を実施し、食に関する内容は、ほぼ学習指導要領に準じて行なわれていた。中学校の技術・家庭科は、ほぼ全校で実施されていた。しかし、学習指導については、両学校段階ともに、教師が材料や用具を準備し、指導・訓練する傾向にあり、示範通りに実習させていて、子どもの意思決定する場面がほとんどないことが明らかとなった。可能な限り生きる力を身に付けさせるためには、障害の程度に応じて子どもに主体的に意思決定できる能力の育成をめざす指導が必要である。そのために、特別支援学級の子どもにおいても小さな意思決定の経験を積み重ねたり、自己の選択を重視する指導を行ない、意思決定能力を質と量の両面で培う必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画は、(1)諸外国及び日本における食教育ー特に調理学習と意思決定能力の関連性の視点からシラバス分析を行なう、(2)普通学級および特別の支援を必要とする児童・生徒を対象にした調理学習における「段取り・・予測をたてて計画・実践する」に関する調査をして実態を把握することであった。 (1)に関しては、カナダ、アメリカ、シンガポール、韓国等、本研究に関連のある諸外国のシラバスを分析・検討し、課題を整理するところまで計画通り行なうことができた。 (2)に関しては、特別支援学級の実態をC県の全数調査として実施したために、当初の計画よりも規模が大きな調査となった。結果として、信頼性のある結果を得ることが出来たが、各学校のシラバス等の分析・検討に時間がかかり、本年度の研究計画が少しずつずれこむ事態となった。そのため次に行なった普通学級における児童・生徒の調査がやや遅れ気味となり、24年度にまたがらざるを得なかったことは反省点である。 以上より、本年度の主たる研究目的は、一部時間的にずれこんだ部分を除いて、概ね達成したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、平成23年度に計画した調査研究のうち一部積み残した普通学級における調査を引き続き行ない完成させる。 平成24年度の研究計画は、大きく分類すると、(1)授業設計及び実験的授業実践と(2)脳機能との関わりを脳血流の測定をすることにより実証することである。 (1)においては、平成23年度の調査の結果を踏まえて、調理場面における意思決定能力育成を志向した授業設計、授業実践、授業の分析・検討、学習効果の分析・検討を行なう。 (2)においては、「段取り」を強調した調理学習の実践を通して、普通学級および特別に支援を必要とする各児童・生徒のWorking Memory の形成を測定し、(1)の結果を踏まえて総合的に分析・検討する。 以上の知見を踏まえて、平成25年度は、意思決定能力育成を志向した普通学級および特別に支援を必要とする児童・生徒を対象とした家庭科カリキュラム及び具体的な授業を提案し、本研究を完結させる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究計画であるWorking Memory の測定では、光イメージング脳機能測定装置を使用する。当初の計画では23年度にこの装置を購入して試験的測定を行なう予定であったが、価格が23年度の研究費だけでは不足であったため、平成24年度の研究費の一部を加えて購入することになった。 また次年度は、初年度及び2年目の研究成果発表のため、当初の計画通り、脳機能解析の専門家への謝礼や旅費等の費用がかかる予定である。
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