研究課題/領域番号 |
23500891
|
研究機関 | 植草学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 文子 植草学園大学, 発達教育学部, 教授 (60215837)
|
研究分担者 |
内野 紀子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (80253235)
|
キーワード | 調理実習 / 段取り / 意思決定能力 / 意思決定プロセス / working memory / 特別な支援を必要とする児童・生徒 / 普通学級 / 脳機能 |
研究概要 |
本研究は、調理実習時における「段取り」の能力に焦点をあて、特に普通学級における児童生徒だけでなく、特別な支援を必要とする児童・生徒を対象にした意思決定能力育成について、そのメカニズムを、調査、授業実践、脳機能の側面から実証し、これからの家庭科カリキュラムへの提言を行なうことである。 本年度の研究計画は、①普通学級及び特別の支援を必要とする児童・生徒を対象とした調理学習における意思決定能力育成に関する前年度積み残し及び発展的調査を実施する。②実際の調理実習において、事例的に児童・生徒に脳機能測定装置を装着してもらい、脳血流の測定結果から意思決定能力の育成状況を分析・検討する事であった。 ①のアンケート調査は、前年度のC県の全数調査による特別支援学級の調査に続いて、公立小・中学校における通常の児童・生徒及び特別な支援を必要とする児童・生徒合計697名を対象に実施した。結果として、献立学習における意思決定プロセスのうち、資源の点検・情報の収集、方法の検討・結果の予想、決定見直し等に主として健常児に肯定的回答が見られ、特別な支援を必要とする児童・生徒においては多様性が見られた。また、実践課題としての食材代替スキルにおいては、健常児、特別な支援を必要とする児童・生徒ともに肯定的回答が認められた。本結果により、従来、特別支援学級では調理実習における選択場面を殆ど設定しないことに対して見直しが必要であるという示唆が得られた。(平成24年度日本家庭科教育学会大会で研究発表) ②の調理実習時の脳血流の測定(working memory)において、特別な支援を必要とする児童に食材の選択場面を設定して実習を行なった結果、児童は概ね適切な意思決定による選択ができ、脳機能の活性化が認められた。次は、普通学級において同様の実験的授業を重ね、それらをふまえて新しい家庭科教育カリキュラムの構築を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) 本年度の研究計画は、①普通学級および特別の支援を必要とする児童・生徒を対象にした調理学習における「段取り・・予測をたてて計画・実践する」に関する前年度積み残しの調査を行ない実態を的確に把握する。② ①を踏まえて、普通学級および特別支援学級における授業設計を行ない、実験的授業を実践し、脳血流の測定を通して、授業効果と意思決定能力の育成状況を分析・検討することである。 まず、①に関しては、特別な支援を必要とする児童・生徒だけでなく健常の児童・生徒合計で697名を対象にアンケートを実施し、詳細に分析・検討することができた。これらの結果は、日本家庭科教育学会の大会において発表した。これにより、前年度のC県の学校における家庭科及び家庭科関連科目の授業実態の全数調査と合わせて、概ね的確に実態を把握することができた。②に関しては、①で得られた知見を踏まえて、普通学級、特別支援学級の調理実習の授業設計を行なった。この設計授業に沿って、まずT小学校の特別支援学級において複数回の実験的授業実践を行なった。その際、抽出児童に光イメージング脳機能測定装置を装着してもらい、脳血流の変化を測定した。正確なデータをとるために、かなりの人数の協力者を依頼する必要もあり、計画した回数すべては行なうことが出来なかったが、他の学校でも実践できたので、特別支援学級においては目的は概ね達成することができた。普通学級に関しては、研究仮説のもとに授業設計までは達成しているが、依頼した学校のスケジュールの問題もあり、実際の授業実践は次年度に持ちこまざるを得なくなった点が反省点である。 以上より、本年度の主たる研究目的は、一部時間的にずれ込んだ部分を除いて、概ね達成したといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) まず、平成24年度に計画した実験授業のうち、一部積み残した普通学級における実験的授業実践を引き続き行なう。 平成25年度の研究計画は、①実験的授業実践の中で、児童・生徒がどのような意思決定をしているか(どのようにworking memoryを形成しているか)について、脳機能とのかかわりからそのメカニズムを追究する。②調査及び実験的実践、さらに脳機能とのかかわりのメカニズムを総合的に踏まえて、これからのよりよい家庭科の調理学習を提言する ことである。 ①においては、光イメージング脳機能測定装置を装着した児童・生徒のデータを専門家の指導のもとに詳細に分析・検討して、研究結果をまとめ、公表する。(学会での発表)②においては、①の知見を踏まえて、授業を構成する要素を整理した授業を設計し、再度実験的授業を通してその妥当性を検討する。 以上の知見を踏まえて、平成25年度は、意思決定能力育成を志向した普通学級および特別な支援を必要とする児童・生徒を対象とした家庭科カリキュラムの具体的な構成案を提案し、本研究を完成させる予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、光イメージング脳機能測定装置を使用してWorking memory を測定した種々のデータの解析を的確に行ない、脳機能と意思決定能力のメカニズムを明らかにする。そのため、脳機能解析の専門家への謝礼は必要である。また、3年間の研究の最終年であり、結果の公表として国内外での発表を計画しているため、旅費が必要となる。また、発表は学会誌投稿も計画しており、投稿料等の費用も必要となる。また、結果を効果的な報告書として作成し、教育現場で活用してもらうことを計画しており、そのための費用もかかる予定である。
|