本研究では、全盲やロービジョン(弱視)などの視覚障害者が日常生活で必要とする触覚及び視覚情報の具体的活用方法(アクセシブルデザイン)を検討する。 全盲視覚障害者に対しては、平成23年度から平成24年度にわたり触覚情報活用のための基礎特性(周波数特性)及び活用方法としてプリペードやクレジットカード識別ための切り欠きのデザイン、さらに衣服の色彩を伝える触覚タグのデザインを行った。このうち、衣服の色彩を伝える触覚タグは視覚障害者におけるニーズが高いことがわかり、そのため平成25年度(最終年度)では、その実用性及び普及のための検討を行った。前年度までの触覚的検討結果を踏まえ、時計文字盤に類似した円環の位置で色を表す方法を採用し、実際に25mm径の触覚タグをアクリルボタン、刺繍、人工皮革、樹脂プリント、の4種の素材にて作成し、全盲視覚障害者によるテストを行った。その結果、基本となる23色(基本10色+低彩度色10色+無彩色3色)の色情報は、いずれのタグでも正しく認識できることが確認され、触覚タグによる衣服の色彩情報伝達が有効であることが判明した。 一方、ロービジョン(弱視)の視覚情報デザインに関しては、前年度までに行ったATMの実験結果を分析し、操作性を向上させるデザインの設計指針を検討した。とりわけテンキーや50音キーの目印として、ポイントとなる位置(たとえばテンキーの5番キー)に色彩を着色する方法やキーの横一列に着色する方法は非常にわかりやすく、ガイドとして有効であることが判明した。これを基に、ATM操作盤の色彩活用と適正な文字サイズやコントラストを推奨するガイドラインを作成した。 これらの結果は関連する学会等で発表し、実用性に向けた様々な有益な意見を収集することができ、視覚障害者に対して具体性のあるアクセシブルデザイン技術を確立することができた。
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