研究課題/領域番号 |
23500899
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研究機関 | 近大姫路大学 |
研究代表者 |
人見 裕江 近大姫路大学, 看護学部, 教授 (30259593)
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研究分担者 |
中村 陽子 園田学園女子大学, 健康科学部, 教授 (00341040)
田中 久美子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00342296)
中平 みわ 梅花女子大学, 看護学部, 講師 (90461970)
谷向 知 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90361336)
奥平 尚子 近大姫路大学, 看護学部, 助手 (00584244)
藤田 敦子(丸尾敦子) 近大姫路大学, 看護学部, 助教 (30512660)
二重 佐知子 近大姫路大学, 看護学部, 助手 (60552130)
佐々木 純子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 助教 (50533361)
三村 洋美 昭和大学, 保健医療学部, 准教授 (30382427)
神保 太樹 昭和大学, 医学部, その他 (60601317)
久山 かおる 梅花女子大学, 看護学部, 准教授 (40413489)
新道 由記子 園田学園女子大学, 健康科学部, 准教授 (90321306)
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キーワード | 認知症高齢者 / 看取り / 本人の意思 / 家族の意思 / ケア提供者の態度 / 多様な看取りの場 / 地域包括的ケアシステムの構築 / 国際研究者交流 韓国 |
研究概要 |
少子超高齢社会であり、かつ多死の時代における認知症高齢者の看取りは増加傾向にある。厚生労働省が実施した「平成22年度介護サービス施設・事業所調査」によると、介護老人福祉施設における入所者のうち、「認知症あり」が全体の96.4%を占めている。さらに、精神科病床に占める認知症疾患による社会的入院患者が増加していること、病院だけでなくグループホームや特定施設等の自宅に代わる多様な看取りの場が増えている。 特に認知症高齢者の「思い」の存在を理解することの重要性が明らかになってきており(石橋2007)、「看取られ方」への意思の確認は理念的目標である。また、尊厳と権利が守られ、その人らしさを尊重した看取りは早急な課題である。 本年度は特に、認知症高齢者にとって「その人らしい」看取りを行うために、認知症高齢者本人および家族の看取りに対する意思確認の方法について、またケア提供者はどのような思いを持ってケアに望んでいるのかについて分析した。 その結果、認知症高齢者の看取りは主に家族によって決定されていることが明らかになった。しかし、本人も希望を語り、同じ入所者の葬儀などを通して意思表示をしていた。また、ケア提供者も日々の暮らしの援助を通して、本人の意思を感じ取っていた。 認知症高齢者の看取りの援助には、本人が言語と非言語をもって語っているということを理解することが大切である。ケア提供者は、認知症高齢者のケアに試行錯誤を繰り返し、症状の変化に戸惑いながらも看取りと向き合っていることが明らかになった。また、家族もケアの対象者と自覚していた。日々のケアを通して、認知高齢者も意思を表すことができることを感じ、本人の満足度を優先し生活史を大切にしたケアを行っていた。今後の課題として、看取りに関するケアの技術・方法への医療の連携が重要である。また、ケア提供者の看取り教育とともに精神的支援が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、1段階の介護保険施設における認知症高齢者の看取りに関する探索的研究:質的記述的研究を実施し、2段階のテーラードモデル・プロトコールの構築をして、3段階としてそのテーラードモデル・プロトコールを用いた看取りケアの実践:ケーススタディである。現在、1段階を進めているところである。インタビューとその分析に当初の計画以上に時間を費やしている現状である。その理由は、認知症高齢者の看取りは一例一例がテーラードモデルであるからといえる。また、1段階と2段階をオーバーラップしながら進んでいる状況でもある。分析結果については、石井らによる「グループホームにおける認知症高齢者への終末期ケア-ケア提供者の思い-、コミュニテイケア15(2)、2013、38-42.に投稿した。また、2013年6月日本認知症ケア学会や7月日本看護学会(老年看護)、等において公表する予定である。 本年度は、家族の思いを語ってもらい、本人の思いとのギャップを検討している。現在分析中であり、さらに例数を増やすとともに、本人と家族の意思の確認を進め、そのギャップを埋める方策について検討していきたい。また、韓国におけるグループホーム等の養老保険施設や在宅におけるホームヘルプサービスを活用した看取りについて、1段階の認知症高齢者の看取りに関する探索的研究:質的記述的研究を実施している。さらに、分析結果については日本老年看護学会において公表する予定である。 日本と同様に急速な少子超高齢化と多死時代を迎えている韓国との比較研究により、本人や家族が地域交流の中で、地域の弱みや強みを生かし、認知症になっても自分らしく、のびのびとした生活を組み立てることによって、その人らしい看取りにつながる。この自ら生活を組み立てることを支援する方策がテーラードモデル・プロトコールの構築へと繋がるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、本研究の目的の1段階の介護保険施設における認知症高齢者の看取りに関する探索的研究:質的記述的研究と、2段階のテーラードモデル・プロトコールの構築をさらに推進して行う予定である。看取りの場が多様化する中、本研究では、3段階のテーラードモデル・プロトコールを用いた看取りケアの実践:ケーススタディまでは、本研究期間内での到達は難しいと思われる。 本人および家族、並びに専門職だけでなく非専門職を含む生活支援者の思いに関する分析について、さらに例数を増やすとともに、本人と家族の意思の確認を進め、そのギャップを埋める方策について検討する。特に代理意思決定によるジレンマとの関係について明らかにしたい。本人や家族が地域交流の中で、地域の弱みや強みを生かし、認知症になっても自分らしく、自らが自分らしく、のびのびとした生活を組み立てることができる支援策を具体的に見ることによって、その人らしい看取りにつながると考える。そして、自らが生活を組み立てることを支援する方策を明らかにしつつ、テーラードモデル・プロトコールの構築につなげる予定である。 本年度は特に、社会的な入院の状況になっている認知症高齢者が地域で暮らすことができるモデルケースについて、どのように本人と家族の意思の確認を進めているのか、そのギャップを埋める方策やネットワークづくりについても明らかにしたい。また、研究の成果について、学生や地域住民の方々に啓蒙し、講演会などを通して、ともに考える場を持つ予定である。 今後の研究の推進方策は、以下の3点を中心に実施する。1.本人および家族、並びに生活支援者のインタビューとその分析、2.のびのびとした生活を組み立てることができる支援策の検討、3.1.2.について日韓を比較検討し、自らが生活を組み立てることを支援する方策を明らかにしつつ、テーラードモデル・プロトコールの構築に繋げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.本人および家族、並びに専門職のみならず非専門職を含む生活支援者のインタビューとその分析、および、のびのびとした生活を組み立てることができる支援策の検討:文献購入、交通費と謝礼、PCおよびソフトの購入、テープ起こしの費用 2.日韓を比較検討し、テーラードモデル・プロトコールの構築:文献購入、交通費と謝礼、テープ起こしの費用 3.啓蒙活動:講演会の講師謝礼、会場費、印刷費 4.報告書作成:印刷製本費
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