研究課題/領域番号 |
23500904
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
浦川 宏 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10183211)
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研究分担者 |
綿岡 勲 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (70314276)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インクジェット染色 / 天然染料 / 染色機構 / 繊維加工 |
研究概要 |
インクジェット染色法の詳細を解明するためにその染色機構を明らかにするための検討をおこなった.乾熱固着処理時の布中の水分や尿素が染料固着率に及ぼす影響を,反応染料-木綿の系について(1)熱処理温度,(2)染料の分子構造および(3)前処理剤としての尿素の存在とその量の3点をパラメータにした染色実験を行い,固着率の変化を求めた.この結果から染色機構の解明につながるパラメータの抽出をおこなった.成果として公表(論文化)するために得られた結果の検討作業をおこなっており,まとまり次第公表する予定である. 天然染料によるフルカラーインクジェット染色法の検討では,天然染料で綿を浸染し,インクジェット法で異なった金属イオンを含む媒染液を塗布した結果,4種の色により天然染料をインクジェット染色に利用できることが明らかになった.さらに天然染料そのものもインクジェットにより塗布することでさらに細かい図柄を描くことができるように染料の種類、染料濃度、インク溶液粘度,媒染液濃度の最適化の検討をおこなった.現状ではいまだにじみの問題が大きく,詳細な図柄を描くことは難しいが,これも最適化の結果改善されてきている.染料植物からの直接抽出による高効率利用化については抽出後凍結乾燥あるいは蒸発乾固後粉砕することにより検討を開始したところである. 天然抽出物質による繊維加工剤としての利用条件の探索と処理方法の確立については,初年度検討課題であったPentagalloylglucoseについてインクジェット法による塗布およびその塗布条件の最適化を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本助成事業において必要なインクジェットプリンタは既存のものを使用する計画で検討を開始した.しかしながら、今年度途中で既存のインクジェットプリンタが故障し修理不能に陥ったために,本助成事業による補助金により新規にインクジェットプリンタを購入し、それを助成事業に用いている.そのために前機種と新機種における検討結果の比較をおこなう必要が生じたため,インクジェットプリンタを使用する事業についてはその時点で当初の計画よりも進展していたが結局計画していた程度の進展にとどまった. このインクジェットプリンタの購入のためにスプレードライヤーの購入は断念した.そのため染料植物からの直接抽出による高効率利用化についての検討では当初予定していた方法とは異なるアプローチを考えている.こちらも計画段階で想定していた程度の達成度となった.
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今後の研究の推進方策 |
インクジェット染色における染色機構の解明,天然染料によるフルカラーインクジェット染色法の開発,および天然抽出物質による繊維加工剤としての利用条件の探索と処理方法の確立については,本年度の成果を元に今後は綿とともに絹にも対象を広げて実施する.さらにインクジェット染色における染色機構の解明に関連して,現在使用している尿素に代わる化合物について検討をおこなう予定である.これらの課題については,秋には現在までの成果を論文および学会等による発表により公表する予定である. また染料植物からの直接抽出による高効率利用化については,本年度開始した抽出後凍結乾燥あるいは蒸発乾固後粉砕する手法の比較を種々の染料についておこなう.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では,研究課題を遂行するのに必要な染料・布帛・加工剤等の薬品などの消耗品を中心にに研究費を使用する.春に学会における研究発表調査及び他機関研究者との意見交換,秋には研究成果発表と他機関研究者との意見交換をおこなう予定であり,旅費を使用する.研究推進のために研究補助者を謝金により雇用し,さらなる研究進展のスピードアップをはかる.
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