研究課題/領域番号 |
23500904
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
浦川 宏 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10183211)
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研究分担者 |
綿岡 勲 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (70314276)
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キーワード | インクジェット染色 / 天然染料 / 染色機構 / 繊維加工 |
研究概要 |
今年度は、「天然染料によるフルカラーインクジェット染色法の開発」「天然染料における固着方法の改善」について大きく研究が進行した。 昨年度から引き続き検討しているインクジェット染色法の詳細を解明するためにその染色機構を明らかにするための検討をおこなった.乾熱固着処理時の布中の水分や尿素が染料固着率に及ぼす影響を,反応染料-木綿の系について(1)熱処理温度,(2)染料の分子構造および(3)前処理剤としての尿素の存在とその量の3点をパラメータにした染色実験を行い,固着率の変化を求めた。この結果から染色機構の解明につながるパラメータの抽出をおこなった.成果として公表(論文化)するために得られた結果の検討作業をおこなっており,まとまり次第公表する予定である。また尿素による染料の拡散促進効果の機構を解明するために、フィルム中の染料拡散実験を重点的におこなった。 インクジェット染色における乾熱固着法の適用については、この方法が天然染料に適用可能なだけではなく、蒸しの工程と比較して十分に処理速度と固着率の改善が見込めることが判明した。 天然染料によるフルカラーインクジェット染色法の検討では,天然染料と媒染剤をそれぞれインクジェット法で塗布した結果,3色分解をおこない、それぞれの色を重ね打ちすることでフルカラーに近い染色ができた。現状ではいまだにじみとカラーマッチングの問題が大きく,詳細な図柄をフルカラーで描くことは困難だが,徐々に改善されてきている。染料植物からの直接抽出による高効率利用化については抽出後凍結乾燥あるいは蒸発乾固後粉砕することにより検討を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本助成事業において必要不可欠なインクジェットプリンタを昨年度購入し、そのプリンタの特性および以前のインクジェットプリンタとの違いを明らかにした。その結果を基にして、従来から計画していた研究目的であるインクジェット染色における染色機構の解明の基礎研究から,天然染料を用いたフルカラー染色の固着プロセスを含む染色と繊維加工を一度に処理する技術開発を目指した実証実験について、おおむね初期の予定通りにまで追いついたと考えている。このインクジェットプリンタの購入のためにスプレードライヤーの購入を昨年断念した。そのため染料植物からの直接抽出による高効率利用化についての検討についてのみ計画段階で想定していたよりも低い達成度となった。
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今後の研究の推進方策 |
インクジェット染色における染色機構の解明,天然染料によるフルカラーインクジェット染色法の開発,および天然抽出物質による繊維加工剤としての利用条件の探索と処理方法の確立については,今後も実施する。さらに今年度重点的におこなったインクジェット染色における乾熱固着法の適用についての課題については,春の学会に発表するとともに報文として公表できるように補強データおよびその機構についての考察をおこなった上で速やかに公表(論文化)できるよう努力する。 また染料植物からの直接抽出による高効率利用化については,抽出後凍結乾燥あるいは蒸発乾固後粉砕する手法の比較を種々の染料についておこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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