今年度は固着処理の改善で大きく研究が進展し、それにより新たな研究の方向性がしめされる結果となった。 インクジェット染色後に染料を布帛に固定するための固着処理については、以前より合成繊維による染色でその染色機構の解明のために検討をおこなってきた。本年度もその処理を天然染料による染色にまで広げ検討をおこなった。水蒸気による固着処理よりも短時間で同等の固着処理が可能なことを見いだしたことは昨年度の成果であるが、今年度はさらにその研究を進めた結果、天然染料の場合には水蒸気処理よりもより多くの染料を布帛に固定できるだけでなく、その固着量が固着時における布帛の水分量には依存しないという合成染料である反応染料と綿の実験系とは違う結果が得られた。これは天然染料の染色機構を解明するための一つの鍵になるだけでなく、染色過程における水の役割をこれまでの考えから根本的に見直す必要があることを示唆している。そのためこれまで得られたデータをもとにして改めて再検討を開始した。そこで、水が染色過程で促進・阻害の両面の面を持つことが強く示唆されたことで、何らかの新たなモデルあるいは考え方を構築し、染色機構についてさらに詳細な検討を今後の研究としておこなう必要性があきらかとなった。 また図柄が蛍光を発する天然染料染色がインクジェット染色を用いた後媒染の手法で可能であることを見いだし、昔からおこなわれてきた天然染料での浸染での媒染の手法がインクジェット技術をもちいることにより新規繊維加工技術開発につながることを明らかにした。
|