研究課題
本年度は、調査対象となる工芸指導所、旧積雪地方経済調査所の記録などの他、国会図書館などが保存する関連資料の補足調査と共に、課題の総合的な整理による研究の体系化に務めて、成果として公表し今後の研究の足掛かりとする事を行った。特に戦前期の東北経済更新運動と地域の工芸・工業事業の振興の仕組みや関係性、人的ネットワークと社会背景を理解し、また山形の雪の里情報館における戦前期から戦中にかけての県資料の調査により、県と国の各省庁との様々な事業における連携、その背後にある思想、地域振興の運動家たちとの関係、具体的な住宅改善で行われた細部の検討や新しい住生活象の提示の過程を理解した。一方で、研究の今日的な状況との関係性や問題意義についても検討を重ねた。東北地域の戦後の住宅近代化の過程を各県の県史や建築産業史などを参照しつつ把握しようと試みたが、全体的で体系的な資料の入手が困難だったので、より焦点を当てた対象、また住生活に関する教育事業や戦後の住政策の中での位置づけなどの面からその把握を試みた。また2011年から並行して行ってきた東北大震災被災地での仮設住宅の訪問調査や住産業の状況調査などとも連関して、むしろ本研究の問題意識をそれらの問題に活かす方法を模索することの意義を重視して、既往研究の再解釈や現地調査の方法の検討を行った。その結果二つの成果あるいは研究の方向性を見出すことができた。一つは社会資本としての生活環境の生産と文化と言う視点であり、工芸や地域文化を活かした住空間や地域の建設を総合的に推進した東北近代史の展望を著作にまとめたこと、もう一つは戦前から戦後にかけての欧米における住環境の資本主義的な近代化と日本のそれとの連関性について新たな研究領域への橋渡しを行った事である。これらの検討を活かしてカナダの研究所に招聘され、米国の国立公文書館で調査を行うことができた。
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West 86th: A Journal of Decorative Arts, Design History, and Material Culture
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