消費者の好みのデザインの既製服を、安価にオンデマンドにカスタマイズすることができる「量産衣料のデジタル仮縫い工房」の開発を最終目標とする。本研究はこのための基礎として、日本人の体型を部位別に体型分類して3次元形状データベースを作り、消費者が自宅で簡単に計測できる自分情報から個人の3次元形状を推定する仕組みをつくることを目的とする。 カスタマイズに活用するためには、衣服を着装した状態の3次元形状を解析対象にすることが適切と考え、2011年度に女性の体幹部上半身の3次元形状を凸閉包に置き換えて相同モデル化するソフトを開発した。衣服用デジタル3Dボディを想定したものである。 2012年度~2013年度にかけて、このソフトを使用し、22歳~35歳の日本人女性55名の体幹部の凸閉包形状モデルを作成し主成分分析した。この結果、4つの主成分軸で3次元形状の82.6%が説明できることがわかった。また、主成分得点を独立変数、人体寸法15項目を従属変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行って推定式を算出した。一定の結果を得たが、これらの解析をとおして、人体の左右差やねじれが形状特性におよぼす影響が予想以上に大きいことが明らかになった。衣服用デジタル3Dボディを想定したモデルとするためには、衣服を着用することにより、左右差やねじれがめだたない形状を基盤に解析を行うことが必要である。 そこで2013年度後半より、凸閉包モデルの左右の座標値を平均化したモデルを作るためのアルゴリズムを検討し、左右差を解消した形状に変形するためのソフトウェアを開発した。また、推定式の妥当性を検証するためのデータとして、研究分担者とともに三重大学において21歳~24歳の日本人女性9名の3次元形状計測を実施した。 現在新しいソフトを用いてこれまでと同様のデータについて、3次元形状推定のための再検討を行っている。
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