調査対象地域は歴史的街道を有し、住民主体のまちづくり活動を行っている。本年度は、地域内でボランティア活動をしている高齢者に対するヒアリング調査と、町内に開発された新興住宅地に居住する住民に対するアンケート調査を実施した。以下に結果を述べる。 ヒアリング調査では、退職後にボランティアに参加した住民たちを対象とした。調査対象者の多くは、退職前には地域との関わりがほとんどなかった人たちである。退職後にボランティア活動をしようと考えていた人は少ないが、何かしたいと考えていた時に、既に活動を始めていた知人から声を掛けられることにより活動を始めている。調査対象者は、活動に参加することで町の良さを再認識し、退職前はほとんど地域との関わりがなかった人も、活動を通して地域内の人間関係を広げ、現役時代とは異なる人間関係を構築していた。そして、自分たちの暮らす地域の課題に目を向けるようになった人も多い。まちづくり活動への参加が単なる個人的な楽しみとしてだけではなく、地域の実情に目を向けるきっかけとなっていることが分かった。 町内に開発された新興住宅地は、子育て世代が多く居住している。しかし、まちづくり活動が行われている街道からは離れているため、地域の一体感には乏しい。ここに暮らす住民たちの地域に対する意識を尋ねた。住民の多くは県内の他の地域から転居してきており、自然が豊かなこと、住宅の価格などが住宅購入の決め手となっている。また、親などが近くに住んでいる人も多く、別居の親や子との交流頻度は高い。そのため、近隣関係については深入りしない関係を望む人が多いが、ずっと住み続けたいと願う人が大半である。将来的には高齢化が著しく進むと考えられる地域なので、相互に助け合える関係を築いていけるような取り組みの必要性が今後高まると考えられる。
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