研究概要 |
申請者らは,食品用素材だけを用いた平均粒径が 1μm(1000nm)未満のナノサイズの液滴から構成 されているエマルション(ナノエマルション)を,低エネルギーな界面化学的方法で調製する研究を進めて おり,これまでに平均粒径 200~300 nm 以下のナノエマルションの調製法を見いだした。しかし,得られたエマルションは白濁しておりナノエマルションとしては不完全であった。また,ナノエマルション生成過程における乳化剤/水/油混合系の微細構造も不明確であった。本研究では,小角エックス線回折測定などを用いて,微細な高次構造及びその生成条件に関する基礎的知見を得,これをもとに平均粒径が小さな(100nm 未満)透明性の高いナノエマルションの調製条件を明らかにし,調理・加工領域の発展に貢献することを目的とした。 本年度はポリグリセリンモノラウリン酸エステルと1種のポリグリセリン縮合リシノール脂肪酸エステルの1:1混合系/水/食用油の状態図作成と,それぞれの系における乳化性と状態との関係について調べた. ポリグリセリンモノラウリン酸エステルは数種のポリグリセリンの重合度が異なるものを用い,親水基であるポリグリセリンの重合度の違いについて検討した.その結果,グリセリンの重合度が高いポリグリセリンモノラウリン酸エステルとポリグリセリンリシノール脂肪酸エステルの1:1混合系/水/食用油系において,最も小さい場合で20nmの平均粒径を有するほとんど透明なエマルションが得られた.その条件を調べたところ,乳化過程においてスポンジ相を通過するとナノサイズのエマルションが得られると考えられた.
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