研究課題/領域番号 |
23500930
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
合谷 祥一 香川大学, 農学部, 教授 (00153742)
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キーワード | ナノエマルション / 小角エックス線 / スポンジ相 / ラメラ |
研究概要 |
テトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(CRT)とデカグリセリンラウリン酸エステル(DGML)、ヘキサグリセリンラウリン酸エステル(HGML)及びテトラグリセリンラウリン酸エステル(TGML)の1:1混合系において、混合乳化剤/水/食用油の比率を変えて、偏光下での観察及び小角X線散乱測定を通じて、状態図を作成した。さらに、状態図を用いて、水あるいは油を滴下しながらプロペレミキサーで攪拌するという省エネな方法で乳化し、得られたエマルションの粒径を測定し、微細なエマルションが得られるかどうか検討した。 CRT:DGML=1:1混合系では相状態が複雑で、明確なラメラやスポンジ(L3)状態の確認はできなかった。一方、CRT:TGML=1:1の混合系乳化剤による相図よりもCRT:HGML=1:1の混合系乳化剤による相図の方がLC相が広がり、虹色LCや流動LCなど多くの種類のLCが観察された。これは、CRT:TGML=1:1が親油性乳化剤2つの混合系であるのに対し、CRT:HGML=1:1は親水性乳化剤と親油性乳化剤の混合系であるためと考えられた。X線散乱測定を行った結果、CRT:HGML=1:1/水/食用油系では目視及び偏光板示唆装置でスポンジ(L3)相と判断していた相図の左上部領域は、ラメラ構造とその他の構造が混合した状態であった。CRT:TGML=1:/水/食用油系では、ラメラ構造が主に見られた。CRT:HGML=1:1混合系の乳化ではO/Wエマルションが生じ、CRT:TGML=1:1混合系の乳化では、乳化剤の比率が低い場合にはO/Wエマルションが、乳化剤の比率が高い場合にはW/Oエマルションが生じた。CR-310:HGML=1:1系では、乳化過程の初めにラメラ構造を経由した場合エマルションが大きくなり、L3相を経由しない方が微細なエマルションが生じる傾向がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的は平均粒径100nm未満のエマルションを調整し、その得られる条件を調べることであったが、最小50nm程度までを予想 していた。しかし、すでに初年度でいくつかの条件を検討し,予定よりも遙かに小さな平均粒径20nmのほとんど透明なエマルションが得 られた。また、小角X線散乱により、生成される微細構造も予想より詳しく明らかにできた。 さらに、本年度は、当初予定のテトラグリセリン縮合リシノール酸エステル(CRT)とデカグリセリンラウリン酸エステル(DGML)系だけでなく、CRTとヘキサグリセリンラウリン酸エステル(HGML)及びテトラグリセリンラウリン酸エステル(TGML)の1:1混合系においても、状態図と乳化性の乳化性の関係について調べ、乳化剤の系によってはこれまでと異なって、乳化過程の初めにラメラ構造を経由した場合エマルションが大きくなり、L3相を経由しない方が微細なエマルションが生じる傾向がみられるなど、新規な現象が見られ、これは疎水性乳化剤の混合系であることが原因と考えられた。 このように当初の目的より多様な系について検討を進めることができ、新たな知見を得られたことから、当初の目的以上の成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画にあげておりすでに平成24年度から検討を開始しているがまだ途中であるカプリル酸を脂肪酸とするデカグリセリン脂肪酸エステルとCRTの混合系及び、当初計画のステアリン酸に変えてより微細なエマルションの調製が予想されるミリスチン酸を肪酸とするデカグリセリン脂肪酸エステルとCRTの混合系について、状態図を作成し、微細構造と乳化の関係をさらに明らかにする
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの結果について本年度8月に東京で開催される日本食品科学工学会で発表する。また、従来計画どおり研究遂行に必要なガラス器具,キムワイプ,試薬などの主に消耗品に使用する.
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