研究課題/領域番号 |
23500932
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
和田 浩二 琉球大学, 農学部, 教授 (50201257)
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キーワード | 黒糖 / サトウキビ / 食品機能性 / ワックス / ポリコサノール / 香気成分 / ストレス緩和 |
研究概要 |
黒糖に代表される含蜜糖は、サトウキビ由来の多くの有用成分を含んでいる。本年度は機能性成分として、引き続きサトウキビ表皮部のワックスの成分組成や主要成分の含量について分析を行った。一方、黒糖の独特な香りは、近年注目されているストレス緩和効果等に寄与する揮発性成分を多く含んでいる。そこで、黒糖の香りプロファイルを明らかにするととともに、その香りの機能性の評価も行った。最終的には、これらの研究を通して食生活での機能性をもつ甘味資源の開発へつながる知見を得る。本年度の具体的な研究成果は以下の通りである。 〇ワックス成分の分析 サトウキビ由来のワックス抽出物をGCおよびGC-MSを用いて分析した結果、高級脂肪族アルコール(ポリコサノール)と長鎖アルデヒドの成分組成やそれらの成分含量の詳細が明らかになり、その結果は国際学会で発表するとともに、国際誌に掲載された。また、黒糖製造工程でポリコサノールと長鎖アルデヒドは濃縮されるが、黒糖中の含量にはその製造工程、特に清浄工程が大きく影響することを明らかにした。 〇香り成分の分析ならびにその機能性の評価 黒糖の香りのプロファイルとして、貯蔵中の変化に着目して分析を行った結果、製造直後はサトウキビ由来の含硫化合物等が多く含まれるが、貯蔵によりそれらの成分は減少するとともに、メイラード反応による香り成分が増加することを明らかにした。これらの結果は貯蔵による黒糖の高付加価値化への基礎的知見になると考えられた。一方、黒糖のストレス緩和試験として、ヒト唾液中のストレス指標成分の定量法、測定環境の最適化およびストレス負荷の方法について検討した。その結果、唾液ストレスマーカーの日内変動は10時~15時の間で小さいこと、ストレス負荷後の唾液ストレスマーカーとしてコルチゾールおよびクロモグラニンAの変動が観察され、有効なストレス指標になることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は大きく2つのテーマからなる。それぞれの達成状況は以下の通りである。 〇ワックス成分の分析 本年度はサトウキビのオクタコサノールおよび長鎖アルデヒドの成分含量の詳細が明らかにし、学会発表を行い、学術論文にすることができた。また、黒糖製造工程でのポリコサノールと長鎖アルデヒドの動向も明らかにでき、本研究で計画したワックス成分のすべての分析を終えることができたことから、計画は順調に進捗していると考える。 〇香り成分の分析ならびにその機能性の評価 黒糖の香り成分の分析は種々の銘柄の香気プロファイルについて明らかにする予定であったが、サトウキビの不作により一定の品質の黒糖製品が得られなかったため、貯蔵に伴う香りプロファイルの変化を分析した。その結果、昨年度設定した黒糖の香気成分の分析法(固相マイクロ抽出法)とGCおよびGC-MSの定量・同定結果から、量的に主要な成分や官能基ごとの香りへの寄与を解析できた。また、官能基ごとの香りへの寄与の解析では、GC-においかぎ分析法を設定できた。さらに、黒糖のストレス緩和試験として、ヒト唾液中のストレス指標成分の定量法、測定環境の最適化およびストレス負荷の方法等について検討できたことから、計画は順調に進捗していると考える。以上の2つのテーマの進捗状況を総合して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のテーマごとの今後の研究の推進方針は以下の通りである。 〇機能性成分の分析 計画していたワックス成分の分析は平成24年度で終了できたことから、黒糖の他の機能性成分の分析と評価を行う。具体的には、黒糖の機能性成分はショ糖以外の成分であり、非常に微量であることから、ショ糖以外の成分が高濃度で含まれる糖蜜を用いて研究を行う。機能性としては、糖蜜抽出物に対する種々の手法によるラジカル消去活性の評価とし、可能であれば機能性成分の単離や構造解析にも着手する。 〇香り成分の分析ならびにその機能性の評価 固相マイクロ抽出法を用いた黒糖貯蔵中の香り成分のGCやGC-MSの定量・同定の解析結果について、学会発表を行い、学術論文としてまとめる。また、黒糖の香り成分の機能性評価については、被験者にストレス負荷後、黒糖摂取した被験者の唾液中バイオマーカーを測定し、各種バイオマーカーの指標としての信頼性の確認、黒糖のストレス低減効果の評価(生化学的評価)および被験者のアンケートによるストレス低減効果の評価(心理学的評価)を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究のテーマごとの次年度の研究費の使用計画は以下の通りである。 〇機能性成分の分析 消耗品費としては、カラムクロマトグラフィーやHPLC分析での試薬、溶媒、ガラス器具等の購入を予定している。また論文の別刷りや国際学会(EuroFoodChem XVII)への旅費に使用する。 〇香り成分の分析ならびにその機能性の評価 香り成分の機能性の評価については、実験の準備やアンケート調査、集計等が必要であることから、数カ月程度実験補助員を雇用する。その他はストレスマーカーに関連するキット等の消耗品の購入を予定している。また論文の別刷りや国内学会(日本食品科学工学会)への旅費に使用する。
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