研究課題/領域番号 |
23500934
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
伊與田 浩志 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10264798)
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研究分担者 |
杉山 久仁子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (30279799)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スチームオーブン / シミュレータ / 測色 / 水蒸気 / 大量調理 / 過熱水蒸気 / エネルギー教育 |
研究概要 |
市販のスチームコンベクションオーブンは,自動制御機能を有しており,いわゆる火加減に相当する食材への加熱量と関連の深いファンや蒸気発生装置,庫内ヒータの作動状況が自動的に調節され変化する.そのため,他の調理機器に比べて自動化が進んでいる反面,ブラックボックス化されているために加熱条件の感覚的な把握が難しい.そこで,装置の動作状態を詳細に把握するとともに,庫内の湿度,温度,風速などの加熱条件の測定と制御,食材の状態を観察するための方法を検討するため,市販のスチームコンベクションオーブンを装置メーカーの協力のもと改造し,これらの機能を有する実験装置を製作した. 事前に装置にプログラムされた3種類の制御モードにおける庫内の湿度,温度の測定を行い,さらにモデル材料として円筒状の水を含ませた耐火断熱レンガの温度と質量変化,食材として鶏肉と牛肉のパテ,食パンのクラム部を用い,加熱中の色ならびに温度変化を連続的に測定した.その結果,特に加熱初期の庫内の水蒸気濃度(湿度)の時間変化がタンパク質の変性(色スペクトル変化)に強く影響することを示した.加熱中の耐火断熱レンガの温度と水分量変化の予測シミュレーションについては,装置構造,蒸気発生量をふまえて開発を進めた.その結果,数個のフィッティングパラメータの導入により,予測がほぼ可能であることを確認した.現在,次年度に向けて補足データの収集と結果の公表準備を進めている. これらの研究成果は,水蒸気を利用した実機を対象とした食品機械の熱・物質移動解析であり,調理科学と工学の接点になるものと期待される.さらに本年度で得られた実験データ,ならびに装置メーカー,スチコン使用者・研究者,栄養士・管理栄養士らからの現場の現状やニーズなどの多面的な立場からの意見は,今度の調理における蒸気の利用,スチコンの利用技術の向上のために有益であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画について,ほぼ予定の内容について実験を実施することができている.国際会議において,食材の品質に関連する内容部分について講演依頼を受けたため,この部分のウエイトが高くなり,シミュレータのインターフェイスの改良と,実際の食材を用いた実験がやや遅れ気味であるが,今後,色変化をシミュレータに組み込むための基礎データが得られたため,おおむね順調とした.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,実験装置の湿度の測定精度と加熱条件の制御精度の向上のための改良を行う.同装置により,食材の種類と,食材の量の影響について実験的に検討する.また,シミュレータの開発では,ユーザーインターフェイスの改良,実験装置とは異なる他メーカーの機種への適用性の検討,インターネットのウェブを利用した計算例の公表とスチコン使用者らとの初年度の研究成果を踏まえた意見交換を重視しながら研究を進める. なお,一部の学会発表と出張時期が年度末ならびに4月にずれ込んだため,年度末段階で残額が生じた.
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次年度の研究費の使用計画 |
装置改造費用(配管材料,湿度や風速の測定装置など),実験の試料と分析,共同研究,連携研究者らとの打ち合わせ,学会発表のための経費,ならびに,ソフトウェアのユーザーインターフェイス製作に関連する費用として研究費を執行予定である.
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