研究課題/領域番号 |
23500939
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研究機関 | 東京聖栄大学 |
研究代表者 |
橋場 浩子 東京聖栄大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20208440)
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研究分担者 |
牛腸 ヒロミ 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (80114916)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | NaCl / 拡散 / 食材 |
研究概要 |
ジャガイモ(シンシア種)の電子顕微鏡写真を観察した結果、98 ℃で予備加熱したものは、細胞内の澱粉が膨潤して、細胞間に隙間のある構造が観察された。 予備加熱したジャガイモ(シンシア種)試料を0.513 mol/kg NaCl溶液に30、50、60、70、98 ℃で浸漬し、濃度プロファイルを得た。これよりFickの拡散係数、Dを算出したが、いずれの温度でも、D vs. C は極大を示した。この結果に二元収着拡散理論を適用して、4つのパラメータ、α、Sa、DT(p)、DT(L)を求めた。2つの熱力学的拡散係数DT(p)、DT(L) は50 ℃と70 ℃の間で顕著に増大した。これは拡散経路である荷電領域の転移の影響を受けたものと推定した。 予備加熱したジャガイモ(シンシア種)の1日経過後の吸熱量をDSCで測定した結果、開始温度(To)、ピーク温度(Tp)、終了温度(Tc)はそれぞれ、40.8 ℃、62.4 ℃、79.5 ℃であり、これは澱粉の老化によるものと考えた。DTの変化とはやや異なる温度帯であり、NaClのDTの変化は、荷電基を持つ蛋白質またはペクチン相の転移によるものではないかと考えた。 そこで、蛋白質含量の異なるジャガイモについて、98 ℃でのNaClの収着を測定した。3種の試料、シンシア、ハルカ、デストロイヤの蛋白質含量と拡散のパラメータの間に相関関係は見られなかった。次に、これら3種のジャガイモ中のペクチン含量を測定し、拡散のパラメータとの間の相関関係をみると、αおよびSaとの間に強い相関を見出した。細胞間を満たしているペクチン中の拡散が律速となっていることが示唆される。 僅かに上に凸の曲線を示す収着等温線を二元収着拡散理論で解析し、2つのパラメータ、β、Kp’を得た。拡散と収着は、二元収着拡散理論により統一的に解釈することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備加熱した3種のじゃがいも中のNaClのFickの拡散係数、Dを得た。Dは大根や凝固卵白や豚肉と同様に、ある濃度で極大を示す濃度依存を示した。この曲線に二元収着拡散理論を適用し、4つのパラメータを得た。 僅かに上に凸の収着等温線から、2つのパラメータ、β、Kp’を得ることが出来た。拡散と収着は、二元収着拡散理論により、統一的に解釈することができた。 DSC測定による吸熱温度とDTの変化とはやや異なる温度帯であった。DSCの吸熱は澱粉の老化によるものと考えられるので、荷電基を持つ水和基質中のDTの変化とは異なる。 これらのことを考慮しながら、現在投稿論文を作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、マグロ・タラ等の魚肉について、平成23年度と同様の実験を行う。平成23年度の結果とあわせて、食材の化学組成の違いと、含水率および水の分布の違いが、食塩の拡散・収着挙動に及ぼす影響を、基質と食塩の相互作用に注目して解析する。DSCの吸熱の結果から、魚肉の基質の転移などの影響を明確にする。さらに、魚肉の組織構造を走査型電子顕微鏡を用いて解析し、実験結果と組織構造の間に関連が見られるかを考察する。平成24年度には国際家政学会で発表する 平成25年度には呈味成分の大きく異なる試料を用いて官能評価を行う。味のしみ方とおいしさの観点から、定量的な呈味成分の分布と官能評価との関係を解析する。さらに、炭水化物性食品、タンパク質性食品についての二元収着拡散過程としての解析をまとめ、食材一般中の食塩の拡散過程を確立する。平成25年度には、これまでの研究をまとめて報文他とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には呈味成分の大きく異なる試料を用いて官能評価を行うので、物品費および人件費が必要である。 味のしみ方とおいしさの観点から、定量的な呈味成分の分布と官能評価との関係を解析する。さらに、炭水化物性食品、タンパク質性食品についての二元収着拡散過程としての解析をまとめ、食材一般中の食塩の拡散過程を確立する。平成25年度には、これまでの研究をまとめて報文他とするので投稿料が必要である。
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