研究課題/領域番号 |
23500944
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研究機関 | くらしき作陽大学 |
研究代表者 |
木村 万里子 くらしき作陽大学, 食文化学部, 准教授 (00351932)
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キーワード | 雑豆 / オリゴ糖 / 機能性食材 / 低利用資源 / 糖鎖 |
研究概要 |
本研究では,アレルギー食材の範疇にない雑豆(大豆・落花生以外の食用豆)由来の機能性糖鎖をグリコドラッグ開発のリード化合物として利用することを目的として,雑豆に含まれる有用糖鎖のスクリーニングを行っている。また,低利用資源の一つである雑豆の機能性食材としての価値を検討するため,雑豆由来オリゴ糖のヒトT細胞分化・生育およびサイトカイン(IL-4,IFN-γ,TNF-α)産生に及ぼす薬理活性の測定,およびプレバイオティクス効果の検定をしている。 私達は,すでに,Vigna属およびPhaseolus属の雑豆には,マクロファージや樹状細胞に対する活性化能を有するハイマンノース型糖鎖が多く存在していることを報告している。平成24年度は,次年度以降の研究に向け,小豆や大納言から比較的構造均一性の高い大量のハイマンノース型糖ペプチドの調製を行うと同時に,それらをポリグルタミン酸にカップリングさせたネオ糖ペプチドの調製を進行させた。 雑豆に含まれる遊離型オリゴ糖のプレバイオティクス効果検定については,3種類の雑豆(小豆、手亡(白インゲン豆)、エンドウ)由来のオリゴ糖画分を用い,乳酸菌(Bifidobacterium)の嫌気培養法による増殖倍率(48時間培養)を指標とした解析を行った。その結果,白インゲン豆の酸性オリゴ糖画分に最も高い効果が見られ、白インゲン豆の酸性オリゴ糖には、Lacturoseをしのぐプレバイオティクス効果があることが分かった。また、小豆やエンドウ由来のオリゴ糖にもBifidobacteriumを増殖させる傾向が認められた。 一方,雑豆由来O-グリカンの研究については,O-グリカン含有糖ペプチドを調製している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は,主にVigna属およびPhaseolus属の雑豆からハイマンノース型糖鎖の大量調製を行い、同時に,それらをポリグルタミン酸にカップリングさせたネオ糖ペプチドの調製を進行させた。このことにより,雑豆由来ハイマンノース型糖鎖のヒトT細胞分化・生育およびサイトカイン産生に及ぼす薬理活性測定のための準備がほぼ整ったといえる。 雑豆に含まれる遊離型オリゴ糖のプレバイオティクス効果検定についても,3種類の雑豆より調整したオリゴ糖画分を用い,乳酸菌(Bifidobacterium)の嫌気培養法による増殖倍率(48時間培養)を指標とした解析を行った。その結果,白インゲン豆の酸性オリゴ糖画分に最も高い効果が見られ、Lacturoseをしのぐプレバイオティクス効果があることが分かった。また、小豆やエンドウ由来のオリゴ糖にも乳酸菌を増殖させる傾向が認められた。 以上のように、雑豆由来ハイマンノース型糖ペプチドの大量調製とネオ糖ペプチドの作製,および雑豆に含まれる遊離型オリゴ糖のプレバイオティクス効果検定については,当初の予定通り研究を進行させることができた。 一方,雑豆由来O-グリカンの研究については,現在O-グリカン含有糖ペプチドを調製している段階であり,まだ構造解析には着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に,雑豆から調製した比較的構造均一性の高い糖ペプチドを用いてヒト免疫細胞の賦活化能を解析したところ,予備実験的ではあるが,Th2型サイトカインであるIL-4とIL-10産生が低濃度の糖ペプチド添加で抑制され,高濃度添加では逆に促進される結果が得られた。平成25年度は,昨年度調製した雑豆由来ハイマンノース型糖鎖を多価数含むネオ糖ペプチドを用いて,ヒトT細胞分化・生育およびサイトカイン産生に及ぼす薬理活性測定を行う。 雑豆に含まれる遊離型オリゴ糖のプレバイオティクス効果検定については,乳酸菌(Bifidobacterium)の増殖倍率を指標にして,さらに豆の種類やオリゴ糖の種類による増殖効果の違いについて検討を進める。 雑豆由来O-グリカンの研究については,今年度中には構造解析に着手する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費については、以下の試薬およびカラムの購入に充てる予定である。①糖鎖構造解析用試薬、②糖ペプチド調製用試薬(雑豆試料購入費を含む)、③ネオ糖タンパク質・ネオ(糖鎖・糖ペプチド・糖鎖コンジュゲート精製に必要)、⑤細胞培養用試薬、⑥サイトカイン測定キット
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