研究実績の概要 |
本年度は,進行が遅れていた雑豆由来O-グリカンの研究を中心に行った。まず,小豆と白いんげん豆(手亡)の脱脂粉末をペプシンで消化後,50%エタノール沈殿,陽イオン交換(Dowex 50 x 2)及び2種類のゲルろ過(Sephadex G-25, Biogel P-2)を組み合わせた手法により,2種類の豆から糖ペプチド画分(高分子と低分子に分画)を分離した(小豆と手亡2種類ずつ,合計4種類)。4種類の糖ペプチド画分は,それぞれ0.1 M NaBH4/0.05 M KOH(37℃)中で30時間反応させ,ペプチド部分からO-グリカンを遊離させた。各反応液は直ちに酢酸で中和後,AG50-X8column(H+)とBiogel-P2にかけてO-グリカン画分の分離・脱塩を行った。得られたO-グリカン画分は凍結乾燥後,TLC分析に供した(薄層, シリカゲル 60; 展開溶媒, n-ブタノール/ 酢酸 / 水(2/1/1); 発色剤, ジフェニルアミン)。以上の分析結果から,手亡は糖ペプチドの低分子画分に,小豆では高分子画分に2~4糖程度のO-グリカンが多く結合していることが明らかになった。O-グリカンの含量(%)は,糖ペプチドの1~13%であった。また,小豆と手亡から調製した各オリゴ糖画分を0.1%含むMRS寒天培地で乳酸菌(Lactococcus lactis,Lactobacillus plantarumなど)を最長48時間培養し,菌体増殖による培地の濁度(吸光度)の上昇を測定することにより増殖促進活性を調べた。その結果,乳酸菌の種類により各オリゴ糖の資化性に大きな違いが認められた。
5年間にわたる一連の研究では,小豆や白いんげん豆などの雑豆から比較的均一性の高い大量の糖ペプチド・オリゴ糖の調製法を確立し,それらを用いてヒトT紬胞分化・生育,サイトカイン産生,プレバイオティクス活性を調べた。以上の研究結果から,小豆や白いんげん豆などの雑豆には高い機能性を有する糖ペプチドやオリゴ糖が存在していることが明らかになった。
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