研究概要 |
SOC、動機づけ、食べ物に対する好き嫌い(感情、認知)、偏食行動(行動)、味覚感受性、ソーシャルサポートなどとの関連性について検討した。 SOCは食感覚に対する嫌悪と負の関連性があった。つまり、SOCが高い場合、刺激に対する感情の調節がはかられ食感覚に対して否定的な感情が制御されていると考えられる。食感覚に対する嫌悪は、偏食行動の諸側面と関連しているとともに、実際に野菜や魚の摂取に対する主観的評価と負の関連があった。そのため、SOCによる食感覚に対する感情の調整は、健康的な食嗜好や偏食の改善に有効であるとと考えられる。ソーシャルサポート、動機づけとの関連性も見出された。あわせてMetSとの関連性についても示唆を得ることができた。 また、生理的な指標により、食感覚に対する認知過程をとらえるための実験を行った。はじめに、甘味溶液と酸味溶液を試料とし、それぞれの溶液に対する好き嫌いの程度を測定した。その結果、甘味には肯定的な回答が得られ、酸味に対しては否定的な回答が得られた。その後、fNIRSを使用し甘味刺激と酸味刺激に対する大脳皮質前頭前野の反応の差について検討した。甘味よりも酸味に対する反応が顕著であり、前頭前野の上側にあたる領域の背外側部(Dorsolateral prefrontal cortex, DLPFC)との関連性も見られた。DLPFCは、ワーキングメモリーに関係する可能性のあるとされている領域でもあり、今後味に対する認知機能を探るてがかりを得ることができた。 健康生成モデルにもとづき、食嗜好および偏食の機序について説明できることが確認された。これにより、健康的な食嗜好の獲得や偏食の改善に寄与する科学的知見を得ることができた。今後、さらにモデルの精緻化を進めるとともに、得られた知見はエビデンスに基づいた食育の推進に役立てることができると考える。
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