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2011 年度 実施状況報告書

緑色食品中のクロロフィルの光による退色と活性酸素生成の抑制・防止に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23500946
研究機関西九州大学

研究代表者

安田 みどり (隈本 みどり)  西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20279368)

研究分担者 田端 正明  佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40039285)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード食品 / クロロフィル / 活性酸素
研究概要

緑茶や野菜の緑色色素であるクロロフィルは、光に対して不安定であり、食品の色調を悪くするためでなく、活性酸素の発生に関与しているともいわれている。クロロフィルの光退色防止を最終目的として、本年度は、様々な保存条件におけるクロロフィルの光 退色作用について調べた。また、クロロフィルによって抗酸化物質の抗酸化性がどのような影響を受けるのかについても検討した。主な成果を以下にまとめる。1.クロロフィルの退色作用様々な保存条件におけるクロロフィルの退色作用について調べた。光の影響について調べた結果、紫外線(UV)または可視光線(Vis)を照射したものは、数日後にクロロフィルが消失したが、遮光により2か月間退色を防ぐことが可能であった。温度の影響については、4℃保存では、2か月後までほとんど変化がなかったが、25、40℃と温度が高くなるに従い、クロロフィル残存率は低下した。さらに、酸素濃度の影響については、光や温度による影響ほどは強くなかったが、酸素濃度が高いものが他に比べてより退色しやすくなった。つまり、クロロフィルは、酸素<温度<光の順に影響を受けやすいことが明らかとなった。2.抗酸化物質の抗酸化性に及ぼすクロロフィルの影響 クロロフィルの光による退色作用により、活性酸素が生じることが知られている。これにより、抗酸化物質の抗酸化性は低下することが予想される。そこで、緑茶に含まれる抗酸化物質である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)の抗酸化性に与えるクロロフィルの影響について調べた。抗酸化性の評価は、ORAC法にて行なった。UVの照射時間に伴い、クロロフィルの濃度は減少したが、EGCGの抗酸化性は増大することが明らかになった。これは、EGCGよりも先にクロロフィルがラジカルを補足していることを示し、より不安定になっているクロロフィルの方がよく補足していることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度において、クロロフィルの退色に及ぼす条件について明らかにすることができ、これを基本として、今後の実験に対する条件設定ができるようになった。本年度の予算にてマイクロプレートリーダーを購入し、抗酸化性の評価を行うことができ、これにより、計画通り抗酸化物質の抗酸化性に及ぼすクロロフィルの影響について調べることができた。しかし、予想に反する結果が得られたことで、さらに詳細な実験が必要であることがわかり、来年度以降継続して検討する予定である。

今後の研究の推進方策

平成24年度1.クロロフィルの光による退色とその抑制のメカニズムの解明:本年度得られた結果に対するメカニズムの解明を目指した研究を行う。すなわち、クロロフィルが光に伴って退色する際に、活性酸素を発生するのか、また、クロロフィルが光退色する際に抗酸化物質の抗酸化性を増大させたが、この要因について調べることとする。活性酸素の測定には、ESRを用いることとし、クロロフィルの分析は、蛍光光度法またはHPLC法にて行う。2.クロロフィルと金属イオンの錯体形成反応:クロロフィルは、ポルフィリンを骨格とし、中心にマグネシウムが配位した構造である。そこで、様々な金属イオンを添加することで、マグネシウムと置換させ、光に安定な金属クロロフィルを見出す。クロロフィルと金属イオンとの錯体形成反応を調べることとする。その後、金属クロロフィルの光に対する安定性の評価を行う。平成25年度実用化に向けた光退色防止法の開発:実用化に向けた取り組みとして、緑茶飲料を無色透明ペットボトルに入れた場合を想定したときのクロロフィルの光による変化を調べる。平成23、24年度の結果を踏まえて、最もクロロフィルの光退色抑制効果を示した条件にて行うこととする。緑茶中の抗酸化物質の定量も継時的に行う。最終的には、クロロフィルの光退色の防止に対して、実用化できるような最適な方法・条件を確立する。本研究により得られた成果は、学会発表や学術論文にて公表を行う。また、特許等の申請が可能と判断した場合は、速やかに申請を行うこととする。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究費は、実験に伴う試薬(クロロフィル、カテキン等)、ガラス器具等の物品費、学会にて成果報告を行うための旅費、他機関での機器使用料(ESR)等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Effects of metal ions (Cu2+, Fe2+, Fe3+) on HPLC analysis of catechins2012

    • 著者名/発表者名
      Midori Yasuda, Chika Matsuda, Ayumi Ohshiro, Kuniyo Inouye, Masaaki Tabata
    • 雑誌名

      Food Chemistry

      巻: VOL.133 ページ: 518-525

    • DOI

      10.1016/j.foodchem.2012.01.018

    • 査読あり
  • [学会発表] 急速加減圧式抽出技術による新規緑茶の開発2012

    • 著者名/発表者名
      安田みどり、中多啓子、大城あゆみ、石川 洋哉、林伊久、相浦正文、塚本敏朗
    • 学会等名
      日本農芸化学会2012年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学(京都府)
    • 年月日
      2012年3月24日
  • [学会発表] 浸透圧式抽出法による新規緑茶の開発2011

    • 著者名/発表者名
      大城あゆみ、安田みどり、比嘉尚希、林伊久、石川洋哉
    • 学会等名
      第48回化学関連支部合同九州大会
    • 発表場所
      北九州国際会議場(福岡県)
    • 年月日
      2011年7月9日
  • [学会発表] Effects of Metal Ions (Cu2+, Fe2+, Fe3+) on HPLC Analysis of Catechins2011

    • 著者名/発表者名
      Midori Yasuda, Chika Matsuda, Ayumi Ohshiro, Kuniyo Inouye, Masaaki Tabata
    • 学会等名
      IUPAC International Congress on Analytical Science 2011 (ICAS 2011)
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府)
    • 年月日
      2011年5月24日

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公開日: 2013-07-10  

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