研究課題/領域番号 |
23500946
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
安田 みどり(隈本みどり) 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20279368)
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研究分担者 |
田端 正明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (40039285)
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キーワード | 食品 / クロロフィル / 一重項酸素 / 光退色 / 金属イオン |
研究概要 |
緑色色素であるクロロフィルは、光(特に、紫外線)により分解を受けやすい。本研究では、緑茶や野菜に含まれるクロロフィルの光退色を防ぎ、緑色を長期間保持することを目的としている。今年度は、クロロフィルの光退色を防止するメカニズムの解明を目的とし、以下のような成果を得た。 1.クロロフィルの光による退色の防止:クロロフィルは、光により低分子に分解されて最終的には無色になる。これは、クロロフィルの酸化によるものであることから、この現象を防止するため、様々な抗酸化物質を添加し、クロロフィルの安定性を調べた。水溶性の抗酸化物質であるアスコルビン酸、カテキンについてはほとんど効果が認められなかったが、脂溶性の抗酸化物質であるα-トコフェロールやβ-カロテンには退色抑制作用が認められた。 2.一重項酸素の発生の抑制:SOSG(Singlet Oxygen Sensor Green)というプローブを用いて、クロロフィルが光分解する際に一重項酸素を放出することを確認した。一重項酸素は、光照射時間に依存して増加した。α-トコフェロールは、一重項酸素の発生を抑えたことから、光退色の抑制と共に光増感作用を防止することが示唆された。特に、光増感反応は、食品の劣化に影響を及ぼすものであるので、α-トコフェロールは、色の保持と食品の劣化防止に寄与する物質であると言える。 3.クロロフィルと金属イオンによる錯体形成反応:クロロフィルは、ポリフィリン環の中心にMg2+が配位した構造を示し、光照射によってMg2+が外れやすい。そこで、別の金属イオンを添加し、Mg2+との置換反応により安定な金属クロロフィルを形成するかについて調べた結果、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+が錯形成を示し、そのうち、Fe2+に光退色抑制効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の目標を概ねクリアしている。クロロフィルの光退色を防止するのは、二重結合を多く有する脂溶性の抗酸化物質(α-トコフェロール、β-カロテン)であり、これらは一重項酸素の消去にも役立っている。また、クロロフィルの中心のマグネシウムイオンを別の金属イオン(特に、Fe2+)と入れ換えることで、光退色を抑えることも明らかになった。今後、これらの基礎実験を実用化の段階に移すために、詳細な研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため、これまでの基礎実験を受けて、実用化に向けたクロロフィルの光退色防止法の開発を行うことを目標とする。緑茶のペットボトルを想定して、クロロフィルの光退色を最も抑えた条件にて、保存試験を行い、それに伴うクロロフィルの濃度はもちろんのこと、緑茶の成分(カテキン、アミノ酸等)や添加物質(抗酸化物質、金属イオン等)の変化を調べる。さらに、一重項酸素についても調べ、本法が食品の品質劣化の防止につながることを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、実験に使用する試薬(クロロフィル等)、ガラス機器等の物品費、また、学会での成果報告にための旅費、論文投稿等の費用に使用する予定である。
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