研究概要 |
申請者は、最終年度に「次世代食品機能性評価法」、すなわち、免疫細胞である好中球のアナローグとしたHL60分化細胞を用いて、化学発光と蛍光を組み合わせてスーパーオキシドアニオン・ラジカル産生と細胞内カルシウムイオンの動態の同時測定を行い、細胞内シグナルトランスダクション機能の観点から、食品の機能性を調べる新規な手法に関して、昨年度に引き続き、本格的な運用を行った。水産発酵食品の魚醤や水産加工食品のアルコール漬け瓶詰めウニ塩辛に加えて、最終年度は、食されている海藻の機能性を調べた。試料としては、対照(コントロール)のマコンブに加えて、本州太平洋沿岸北中部に分布して佃煮や味噌汁の具となるコンブ科アラメ、太平洋沿岸中部から九州にかけて分布して味噌汁の具となるコンブ科のカジメ、北海道の東部を除く日本全土の海域に広く分布する秋田県では味噌汁の具に利用されるホンダワラ科アカモクを用いた。食品機能性の一つである従前の抗酸化能測定法であるORAC法やESR法で測定を行うと、ORAC法ではマコンブが181マイクロモル・トロロックス当量/100 g(以下単位略)、アカモクは1,288と低い値であったが、アラメは21,432、カジメは27,002の高い値を示した。ESR法ではマコンブのIC50値が16.7%、アカモクが4.1%、アラメが4.3%、カジメが5.3%といずれも低い抗酸化能であった。次世代食品機能性評価法においては、アラメが0.01%濃度以上からスーパーオキシドアニオン・ラジカル及び細胞内カルシウムイオン濃度の両方のピーク面積比を抑え始めたことから、抗炎症能力を持っていることが示唆された。同様に、カジメにおいても0.1%濃度以上から抗炎症能力を発揮し始めた。一方、マコンブやアカモクには、抗酸化能、抗炎症能、免役賦活能のいずれも認められなかった。
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