研究課題/領域番号 |
23500952
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
赤松 利恵 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (50376985)
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キーワード | 栄養教育 / 行動科学 / 発達段階 |
研究概要 |
本研究は,行動科学の観点を取り入れた子どもの食育の確立と普及を目指し,発達段階に応じた子どもの食行動の検討と食育の教育内容・教材の開発を目的としている.平成24年度は,昨年度に開発した教材の普及啓発研究と今後の教材研究につながる基礎的研究を行った. 1.普及啓発研究:(1)保育関係者を対象とした幼児期の偏食に関する教材研修会:研修会に参加した全員(27名)が行動科学を理解したと回答し,ほとんどの者が教材を『活用できる・したい』と回答した.(2)栄養教諭による紙芝居の実践:昨年度実施した研修会参加者11人が各自の勤務校の児童を対象に,紙芝居教材を用いて食べ残しの指導を行った.その結果,各校での指導の有用性が評価された. 2.基礎的研究:(1)3色食品群の活用の現状:「赤黄緑の3色食品群」分類について,学校栄養士237人に調査を行った.その結果,ふだんの分類と,正しいと考える分類が一致している者の割合が低い食品は,こんにゃく,わかめ,こんぶ,のり,ひじき等であった.(2)学校給食の献立の主食の違いによる栄養提供量の比較:都内小学校16校から,収集した給食献立から,米飯食群,パン食群の2群のエネルギー量等を調べた.その結果,米飯食群はパン食群に比べ,食塩相当量,総野菜量,エネルギーに対する脂質比が少なく,魚が含まれる頻度が高かった.(3)小学生の野菜摂取に関連する知識と嗜好:小学4年生128人を対象に,野菜摂取に知識と嗜好のどちらが関連しているか検討した結果,知識では差はみられなかったが,300g以上の野菜摂取群で野菜を「好き」と回答する子どもが多かった.(4)中学における食の課題の現状:中学生の食に関する課題を質的に収集することを目的に,中学校に勤務する学校栄養士4人を対象にグループインタビューを行った.その結果,学校の問題として,環境,生徒,先生,給食のカテゴリが得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度も複数の研究を実施し,学会・論文発表を行い研究成果を残し,おおむね順調に進展しているが,平成25年度を最終年度と考えると,若干の遅れは否めない. 本研究では最終的に,食育キットと呼ばれる発達段階に応じた食育教材のセットを完成させることであるが,実際研究を始めると,教材のコンテンツとなる基礎的研究が少なく,平成24年度の半分は,教材の基礎的研究に費やした.平成25年度は,足りない基礎的研究を実施するとともに,教材開発の研究を進めたい.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,平成24年度に実施した研究成果について,学会および論文発表を行い,さらに,各発達段階の研究を発展させ,系統立てた研究へと進展させる. 1.幼児期の子どもの楽しい食事に関する研究:幼児期の食生活では,「楽しく」食べることが重視される.しかしながら,子どもが楽しんでいる様子を捉えることは難しく,研究が進んでいない.子どもが「楽しく食べる」様子を測る指標の検討を進める.さらに,偏食の継続について,縦断的データを用いて検討する. 2.学校給食の食べ残しに関する研究:給食の食べ残しの研究は,これまで低学年を中心に行ってきた.この研究を,高学年,中学生といった発達段階を広げるとともに,食べ残しの要因にあがる給食献立や給食指導などの改善に向けて,研究をさらに発展させる. 3.3色食品群の活用状況に関する研究:3色食品群の分類の妥当性を調べるため,今年度収集した学校給食の栄養提供量から,各栄養素量に寄与する食品群を調べる.さらに,献立表での3色食品群の分類について調べる.
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究,1~3については,平成25年度開催される日本健康教育学会学術大会および日本栄養改善学会で報告する.さらに,6月千葉県で開催される8thAshia Pacific Conference on Clinical Nutriton (APCCN2013)および8月米国ポートランドで開催されるSociety of Nutrition Education and Behavior(栄養教育に関する国際学会)においても,上記の研究を報告する.すでに,抄録は採択されている.これら,学会発表に関わる参加費,旅費・宿泊費に使用する予定である. また,平成24年度に収集したデータについては,随時論文化を進める.論文化に必要な査読料や別刷り等に研究費を使用する予定である. 上記研究2については,平成25年度も引き続き,データを集める予定であるため,調査実施に関わる通信費,消耗品,人件費等を使用する.研究成果の教材化および報告書作成に関わる印刷費および研究を進めるにあたっての専門的知識の提供(人件費)も計上した.
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