本研究は,行動科学の観点を取入れた子どもの食育の確立と普及を目指し,発達段階に応じた子どもの食行動の検討と食育の教育内容および教材の開発を目的に研究を進めてきた. 平成23年度は,1) 幼児が食事を食べたがらないとき,母親がとる方法を研究し,結果をもとにパネルシアターを作成した.2) 小学校低学年の給食の食べ残しに関する紙芝居教材を作成し,実際小学校で実施し,教材の実施可能性を確認した.3) 発達段階を考慮した栄養に関する教育の研究では,栄養に関する教育に用いる教材を調査し,3色食品群がよく使われていることを報告した. 平成24年度は,開発した教材の普及啓発を行い,今後の教材研究につながる基礎的研究として,3色食品群の活用状況調査,献立別の栄養提供量の調査,野菜摂取に関わる要因の検討,中学校における食べ残しの研究を行った. 平成25年度は,1) 幼児の食事を楽しんでいる様子を捉えるための,「子どもが食事を楽しむ様子」尺度の開発を行った. 2) 高学年の児童を対象に,給食の適量に関する教材を開発した. 3) 3色食品群の研究については,小学校から提供された256食の給食から,各栄養素量に寄与する食品群を調べ,食品群の分け方には提供量を加味する必要があること,また,1つの食品でも複数の食品群の栄養素に寄与することを報告した.4)給食委員会の活用について,小中学校の学校栄養士を対象に,委員会の現状を調査し,給食委員会の活動には幅があり,さらなる活用の可能性を示唆した. 3年間を通して,15本の論文と21演題の学会発表を行った.さらに,開発した教材も出版等を通じ,一般に入手可能な形にし,研究成果を社会に発信してきた.研究目的は概ね達成できた.食育では生涯通じて必要な知識とスキルを身に付ける必要がある.今後は子どもに限らず,成人を含め,間断ない食育プログラムの開発研究が必要である.
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