研究課題/領域番号 |
23500953
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
翠川 薫 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), リサーチアソシエイト (20393366)
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研究分担者 |
村田 真理子 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10171141)
翠川 裕 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10209819)
中村 哲 独立行政法人国立国際医療研究センター, 熱帯医学・マラリア研究部, 室長 (40207874)
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キーワード | 国際情報交換 / ラオス / アルツハイマー / 生活習慣病 / 食生活 |
研究概要 |
本研究は、先進国で増加し深刻な社会問題となっているアルツハイマー病(以下、AD)が、途上国においても将来同様に増加していくのか、これまでの知見を検証しながら途上国での発症リスク評価を行う事を目的にしている。ラオスでのこれまでの調査で、都会ではメタボリックシンドローム予備群の割合が予想以上に高く、地方の山岳少数民族との格差が明らかであった。AD 罹患リスクは糖尿病患者で高く、特にAD危険因子ApoE遺伝子のe4が伴う場合は、さらに高くなる報告がある事から、都会での糖尿病増加は深刻と考える。 当該年度では、2007年に実施した成人対象の健康調査の5年後の変化を比較するために同村にて5年前と同様の健康調査を行った。その結果、BMI25以上の肥満が5年前の30%から50%に、糖尿病の疑いのある人が約2倍に増加していることがわかった。家電製品や乗り物などの保有率の増減から、生活様式の変化が途上国においても中高年の肥満、糖尿病の増加に、影響していると推測された。これらの結果は第83回日本衛生学会において、成果報告として発表した。 また我々の調査で明らかになった有害金属汚染の地下水も重要な課題の一つであったが、我々のデータ提供により、地下水を飲料にしないことや、上水道整備の陳情運動が起こり、住民の健康意識の変化に貢献することが出来た。当該年2月の調査時には、対象村においてヴィエンチャン市保健局のスタッフとともに、これまでの調査結果の報告会を開き住民との質疑応答を行った。住民の関心は主に上水道がいつ村に供給されるかであり、本研究の情報提供による住民の健康意識の向上と行動変化は、大変意義があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究継続の成果により当該国の研究機関との信頼関係が良好であり、協力体制が確立されているので、調査時の協力スタッフや情報提供などがスムーズに行われ、おおむね目標どおりの成果が得られている。当該年度においては、2007年に実施した成人住民健康調査の5年後の変化を調べる目的で、5年前と同様に同村の成人住民の健康調査を実施した。協力機関の医師と村人の協力により成果を得ることができた。病院での認知症の患者の探索は難しいが、これも予想通りではあるので、引き続き病院医師との連携を継続していくことが重要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、引き続きフィールド調査で、環境水や食品の有害金属汚染と、首都圏近郊の別の村での2008年に実施した住民健康診査の5年後の変化を昨年度と同様に行いデータを積み重ねる。また、研究協力機関であるラオス国立マホソート病院の副院長の要請で、我々の研究結果報告会を病院スタッフ向けに実施する。さらに病院で研究協力スタッフをつのり痴呆症患者の村での聞き取り調査を実施する。また、培養細胞を使った環境因子や食因子の検討を行う。特に地下水の有害金属類汚染が住民の健康に影響していないかどうか、また近郊の村にも汚染が及んでいないかの調査も可能な限り実施していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は、当初予定していたApoE遺伝子解析が依頼先の営業停止により突然外注できなくなったことによる残金と、昨年度同様パスツール研究所からの人件費およびレンタカーの提供などにより、予定額より支出が抑えられた為、未使用額が生じた。25年度は、24年度未使用額と合わせて、当該国フィールド調査のための出張費、研究協力者への謝金、健康調査のための器材購入費(HbA1cおよび血糖値測定器等)、水と食品の有害金属の汚染状況を測定するための試薬・器材、毛髪からの有害金属検出と血液サンプルからの遺伝子解析の委託費、アンケート・健康診断用紙・報告書等の印刷費、培養細胞実験の試薬等に計画どおり使用する。さらにH24年度秋からラオス新政府の方針転換により、すべての研究調査に関して毎年倫理委員会の承認を受けなければならなくなった。また、継続研究であっても、新制度に従って、新たに研究許可を保健省に申請しなければならなくなり、倫理委員会申請および承認にかかる費用等を加えて新たな支出が増加することとなる。
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