研究課題
本研究では、主に胎盤および脳血液関門に着目して脂肪酸を中心とした細胞周囲の環境が細胞機能について与える影響を検証するとともに、その作用機序について研究を行っている。研究成果とその意義について以下に示す。1. 脂肪酸結合タンパク(FABP)は、水に不溶な脂肪酸を細胞内の標的部位に輸送して、様々な細胞機能を発揮する。各種FABPが時間的空間的に胎盤機能を調節し神経系を中心とした胎仔の発育に関与すると考えられるがその詳細は不明である。そこで本研究では各種FABPKOマウスおよび培養細胞を用いた検討を行い、マウス胎盤においてFABP3(心臓型FABP)が母体から胎仔への脂肪酸のcellular regulatorであることを示した(投稿準備中)。この結果から心臓疾患のマーカーとして近年使用されているFABP3の新たな臨床応用の可能性も示された。2. 血液脳関門は脳の微小血管にある内皮細胞とその周囲の細胞によって構成され、これを通過する分子を選択することによって、中枢神経系の細胞を取り巻く環境を、体の他の部位の環境と分ける働きを持っている。主に培養脳血管内皮細胞を用いて、冷却により血液脳関門が一時的に開くことを確かめるとともに、血液脳関門を構成する主要分子の一つであるclaudin-5が冷却によって機能の場である細胞膜から細胞質へ移行することを見出した(in press)。この結果によって、血液脳関門の周囲の環境による制御機構の解明が進むことが期待される。
2: おおむね順調に進展している
母体の脂肪酸摂取の多寡が子どもの脂肪酸輸送に与える影響について、胎盤を中心に実験的な検証がほぼ終了し、投稿を準備している。また、脳血液関門とそれをめぐる環境についての実験も進み結果は近日中にpublishされる。
FABPは各組織・細胞について、多様な機能を担うと考えらえるが、特に母体から胎仔への脂肪酸輸送についてはFABP3が重要な役割を担うことが本研究より明らかとなった。今後は、作用発現のメカニズムについて、その制御機能の解析が必要である。今年度はさらにvivoとvitroの両面から解析を進めてゆく。
該当なし
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