研究課題/領域番号 |
23500957
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
有持 秀喜 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30311822)
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研究分担者 |
片岡 佳子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (40189303)
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キーワード | 高脂肪高糖分食 / 自然発症型1型糖尿病 / NODマウス |
研究概要 |
食生活の偏りが起きているのと同時に、アレルギー疾患などの免疫系が重要な役割を果たしている病気が増加しているが、免疫系が関与する疾病が食生活の乱れによってどのような影響を受けるのかは完全に明らかにされていない。昨年度行った研究結果より、リューマチ様関節炎のモデルマウスでは脂肪と蔗糖の過剰摂取は関節炎発症に悪影響を与えなかったことから、今年度は自己免疫疾患である1型糖尿病のモデルマウスを用いて実験を行った。4週齢のNODマウス(オス13匹、雌17匹)を2群に分け、通常食(オリエンタル酵母工業製MF diet)または高脂肪高糖分食(オリエンタル酵母工業製F2HFHSD diet、脂肪30%、ショ糖20%含有)を与えて飼育した。このマウスは薬剤の投与なしで1型糖尿病を自然発症するので、尿糖および血糖値の測定を定期的に行い、発症を観察した。高脂肪高糖分食群ではオス、メスとも実験開始から1か月で体重増加が通常食群よりも高い傾向を示し、3か月後には統計学的にも有意な増加となった。通常食群において1型糖尿病の自然発症はメスでは4か月後から見られ始めたが、オスでは11か月後に初めて見られた。しかし、高脂肪高糖分食群では1型糖尿病の発症はメスでは8か月後から見られ始め、オスでは実験期間内に発症が見られなかった。実験開始から18か月経過した時点での発症率は、メスの通常食群が75%(8匹中6匹発症)であるのに対し、高脂肪高糖分食群では33.3%(9匹中3匹発症)であった。オスの場合、通常食群では発症率が28.6%(7匹中5匹発症)であったが、高脂肪高糖分食群では0%(6匹中0匹発症)であった。これらの結果より高脂肪高糖分食はNODマウスの自然発症型1型糖尿病に対し、少なくとも促進する効果はないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想に反して、高脂肪高糖分食はNODマウスにおける自然発症型1型糖尿病に対し、少なくとも促進する効果はなく、むしろ抑制気味に働いたので、現在、再現性を確認する為の実験を準備中である。確認実験ではマウスの匹数を増やし、脂肪および糖分の含有量を増加した飼料を使用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果により、高脂肪高糖分食を与えると2型コラーゲン投与によるDBA/1Jマウスの関節炎発症、およびNODマウスにおける自然発症型1型糖尿病を促進するどころか、むしろ抑制する傾向を示した。この結果の再現性を確認する為、マウスの匹数を増やし、脂肪および糖分の含有量を増加した飼料を使用して実験を行う。そして実験飼料による影響がこれらのモデルマウス実験系において再確認された場合、適切な部位の組織学的検査を行い、炎症性細胞の浸潤の程度などを比較検討する。また、腸内菌叢の変化との関連を調べるため、T-RFLP法を用いて腸内菌叢を解析し、腸内菌叢の解析で顕著な変動を見せた腸内菌を用いてモデルマウスの擬似的ノトバイオートを作成したり、各種抗生物質を投与して腸内菌叢に変化を与えたマウスを作成したりして、腸内菌叢の変化がこれらの自己免疫性疾患発症に与える影響を検討する。免疫学的、血清学的検討を行うため、病巣部位や腸管、脾臓、リンパ節などを回収し、CD3、CD4、CD8、B220などのリンパ球表層マーカーや、IL-10、IL-17、IFN‐γ、TNF-αなどのTh1・Th2サイトカインに対する標識抗体を用いて細胞外染色、細胞内染色を行い、フローサイトメーターでリンパ球の特徴付けを行う。また、血清中のサイトカイン濃度を、ELISA法を用いて測定する。分子レベルでの機序の解析を行うため、試験食を与えたモデルマウスに抗マウスCD98抗体を腹腔内投与し、自己免疫性疾患発症におけるCD98分子の影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年3月中に発注した試薬などについて支払い手続きが4月にずれ込んでしまったため、繰越が生じているような表記となっているが、昨年度のうちに予算をすべて使い切るように試薬などを注文しているので実質上の繰越額は0円である。今年度の予算は交付申請書に記載したとおりに使用する予定である。
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