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2011 年度 実施状況報告書

腸管の健康保持における食生活と腸内菌の重要性についての研究

研究課題

研究課題/領域番号 23500958
研究機関徳島大学

研究代表者

片岡 佳子  徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (40189303)

研究分担者 有持 秀喜  徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30311822)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード腸内菌 / 無菌マウス / インターロイキン-10 / B細胞
研究概要

食生活の変化に並行して免疫関連疾患が増加している背景に腸内菌叢の変化が関与している可能性本研究では腸内菌を無菌マウスに定着させる実験モデルを用いて、腸管バリア機能の促進および免疫応答を調整する腸内菌を特定することを今年度の研究目的とした。通常(SPF)マウスの盲腸内容物から腸内菌を嫌気的に分離し、16S ribosomal RNA遺伝子の塩基配列の相同性から7菌を同定した。この7菌を合わせて、またはSPFマウス糞便を無菌マウスに経口投与し3週間以上無菌的に飼育した後、マウスの小腸および大腸の上皮細胞間リンパ球および粘膜固有層リンパ球(LPL)をフローサイトメトリーで解析した。7菌の投与群では抑制性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)産生細胞が増加していたが、増加の程度はSPF便投与群に比べると小さかった。腸内菌の定着によって増加するIL-10産生細胞としてはCD4陽性制御性T細胞が報告されているが、本研究ではCD4 陰性IL-10産生細胞の増加も観察された。この細胞は2週齢ではわずかであるが、4~8週齢の間に小腸LPLで増加していた。4週齢から抗菌薬バンコマイシンを投与したマウスでは非投与マウスに比べ少数であった。このCD4 陰性IL-10産生細胞は通常のT細胞、B細胞、NK細胞、樹状細胞とは表層マーカーの発現が異なるが、IgMの発現およびRAGノックアウトマウスには存在しないことからB細胞の一種と考えられる。T細胞をSCIDマウスに移入する大腸炎モデルにこの細胞を移入すると大腸炎に対する抑制傾向がみられた。この細胞はIL-10以外に腸管の抗菌タンパク質の産生促進や組織の再生などに関与するサイトカインIL-22も発現していた。 以上の結果より、マウス腸内菌の定着によって免疫応答の抑制に関与している可能性のある細胞集団が出現することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度の実験結果より、マウス腸内菌の定着によって免疫応答の抑制に関与している可能性のある細胞集団としてCD4 陰性IL-10産生細胞が出現することが示唆された。この細胞集団は離乳期以降の4~8週齢の間に小腸LPLで増加するので、食物摂取との関連性が十分考えられる。昨年度に分離した腸内菌7種のみを定着させた場合には、SPF糞便投与により全腸内菌を定着させた場合に比べてこの細胞の出現量が少なかったので、当初の計画通り、難培養性の菌種の分離を行う必要がある。昨年度は今回分離した腸内菌あるいはSPF糞便の投与によって増加するCD4 陰性IL-10 産生細胞の免疫応答調整機能を病態モデルで検討することを優先して行ったため、昨年度計画していた腸管のバリア機能の指標である抗菌タンパク質や分泌型IgA の定量および腸管の透過性の測定は平成24年度計画に組み入れる。

今後の研究の推進方策

平成23年度に分離同定した腸内菌7種を無菌マウスに投与したが、小腸粘膜固有層(LPL)中CD4陰性IL-10産生細胞はSPF糞便投与した場合ほどは増加しなかった。特に培養の困難な菌種の分離率を高めるため、マウスの盲腸内容物を加熱またはクロロフォルムで前処理して腸内菌の再分離を行う。また、分離菌をマウスに投与するための増菌培養がうまくできなかった場合、前処理した盲腸内容物、または、分離培養後の集落をかきとって直接無菌マウスに投与して、腸内環境の変化LPL中CD4陰性IL-10産生細胞を中心に調べる。これらの分離菌を定着させたマウスの腸管バリア機能を抗菌タンパク質や分泌型IgA の定量および腸管の透過性の測定によって評価する。また、腸内菌定着マウス飼料を食物繊維の多いもの、または少ないものにして、腸内環境を正常に形成する上での食物由来の短鎖脂肪酸、特に酪酸の重要度を検討する。

次年度の研究費の使用計画

物品費は、無菌マウスの購入および飼育費、腸内菌の分離と培養に必要な培地と試薬類、マウス小腸粘膜リンパ球の調製およびフローサイトメトリーによる解析のための試薬および抗体類、ELISAによるサイトカインの定量のための試薬の購入のために使用する予定である。無菌マウス飼育用のビニルアイソレータ-およびフローサイトメーターなどの機器は所属講座が保有しているものを使用予定である。旅費は研究成果の発表および情報交換のために、謝金は動物実験の補助として、その他の経費は論文作成のために使用予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Notch2 regulates the development of marginal zone B cells through Fos2012

    • 著者名/発表者名
      Iwahashi S, Maekawa Y, Nishida J, Ishifune C, Kitamura A, Arimochi H, Kataoka K, Chiba S, Shimada M, Yasutomo K
    • 雑誌名

      Biochemical Biophysical Research Communications

      巻: Vol. 418 ページ: 701-707

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2012.01.082

  • [学会発表] Notchシグナルは小腸粘膜固有層に存在するCD4+CD11c+細胞の分化に必要である2011

    • 著者名/発表者名
      石舟智恵子
    • 学会等名
      日本免疫学会総会
    • 発表場所
      幕張メッセ(千葉県)
    • 年月日
      2011年11月28日

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公開日: 2013-07-10  

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