研究課題/領域番号 |
23500958
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
片岡 佳子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (40189303)
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研究分担者 |
有持 秀喜 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30311822)
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キーワード | 腸内菌 / 無菌マウス / インターロイキンー10 / インターロイキンー22 / B細胞 / 大腸炎モデル |
研究概要 |
食生活の変化に平行して免疫関連疾患が増加している背景に腸内菌叢の変化が関与している可能性がある.昨年度は、無菌マウスに腸内菌を定着させるモデルを用いて、腸管バリア機能の促進および免疫応答を調整する腸内菌を検索し、制御性サイトカインであるインターロイキン-10 (IL-10) を産生するB細胞の一種と考えられる細胞が、無菌状態ではほとんど存在していないが、4週齢以降に増加することを明らかにした.この細胞は IL-10 のほかにIL-22 を発現していた.今年度は、この細胞の機能を明らかにするため、まず in vitro 培養系でIL-10, IL-22 を産生していることをELISA で確認した.B 細胞に対する刺激を加えるとIL-22 産生は増加した.次に、RAG2 ノックアウトマウス(T細胞、B細胞を持たない)にT細胞を移入して誘導する大腸炎モデルに、このB細胞を移入すると大腸炎が抑制されること、さらに抗 IL-10 抗体をB細胞移入前に投与するとその大腸炎抑制効果がキャンセルされることを明らかにした.このB細胞はバンコマイシン処理により減少したので、グラム陽性菌の標準株を無菌マウスに定着させ、小腸粘膜固有層のリンパ球をフローサイトメトリーで解析したところ、Enterococus投与マウスではこのB細胞の増加がみられたが、Bacillus , Bifidobacterium では増加はほとんどみられなかった。 以上の結果から、マウス腸内菌の定着によって免疫応答の抑制に関与している可能性のある細胞集団が出現すること、Enterococusのようなありふれた菌への暴露によって、制御性サイトカインIL-10 や抗菌ペプチどの発現誘導や組織再生に関与するIL-22 を発現する細胞集団が出現することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫系の制御において重要なインターロイキン-10 (IL-10) を産生するB細胞の一種が腸内菌によって出現するという昨年度の実験結果をもとにして、今年度は、グラム陽性菌のうちEnterococcus がこのB細胞を誘導することを明らかにした.また、大腸炎モデルマウスにおいてこのB細胞が大腸炎を抑制すること、抑制機序の一つとしてIL-10が関与している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの離乳期以降に出現するこのIL-10, IL-22 産生B細胞の機能を経口免疫寛容モデルにおいてさらに検討する。このB細胞を移入した場合、あるいはバンコマイシン投与によりEnterococcus を含むグラム陽性菌を減少させた母マウスから生まれたマウスを用いる場合などについて、卵白アルブミン(OVA) を経口投与後、腹腔内投与して全身免疫し、血清中のOVA 特異的抗体価を測定する. また、腸内菌の定着やこのB細胞の出現に伴って腸管のバリヤー機能がどう変化するのかを、腸管の透過性、抗菌タンパク質や分泌型 IgA の定量によって評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費はマウスの購入および飼育費、マウスの小腸粘膜リンパ球の調製およびフローサイトメトリーによる解析のための試薬、抗体類などの購入のために使用予定である。旅費は研究成果の発表および情報交換のために、その他の経費は論文作成や共同機器の利用のために使用予定である.
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