研究課題
食生活の変化に並行して免疫関連疾患が増加している背景には腸内菌叢の変化が関与している可能性がある。本研究では腸管の免疫応答を調整する腸内菌を特定し、腸管の健康保持における腸内菌の役割を検討することを目的とした。平成23年度および24年度は、マウス小腸粘膜内の免疫関連細胞のうち制御性サイトカインであるインターロイキン-10(IL-10)を産生する細胞を増加させる腸内菌を探索した。既に免疫応答を調整することが知られているCD4陽性制御性T細胞以外の細胞群のうちB細胞の一種と考えられる細胞群が、無菌マウスにはほとんど存在せずマウスの週齢に依存して存在比率が増加すること、また無菌マウスにSPFマウス糞便を投与すると増加することを見いだした。マウス糞便から分離同定した腸内菌7種(主要構成菌であるBacteroides属およびLactobacillus属を含む混合菌)を定着させた場合にもこの細胞群は増加した。バンコマイシン投与により腸管内のグラム陽性菌を減少させると小腸粘膜中のこの細胞群は減少し、グラム陽性菌であるEnterococcusを単独で無菌マウスに定着させた場合には増加した。この細胞群は、in vitro培養系ではIL-10および抗菌タンパク質の産生や組織修復に関わるIL-22を産生し、B細胞に対する刺激を加えるとIL-22産生が増加した。平成24年度以降はナイーブT細胞の移入による大腸炎モデルマウスを用い,このB細胞群を投与すると大腸炎が抑制されること、さらに抗IL-10抗体の投与によりこの細胞群による大腸炎の抑制効果が解除されることを明らかにした。以上の結果は、Enterococcusのようなありふれた常在菌への暴露によって腸管における免疫応答の調整に関与する可能性のある細胞集団が出現することを示唆したものである。
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Biochemical Biophysical Research Communicatins
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Nature Communications
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