研究課題/領域番号 |
23500959
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
受田 浩之 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (60184991)
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研究分担者 |
島村 智子 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (50350179)
柏木 丈拡 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (60363256)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 茶 / 発酵茶 / 味 / 機能性 / 抗酸化活性 |
研究概要 |
高知県長岡郡大豊町で生産されている世界的に見ても珍しい二段階発酵茶「碁石茶」の二次機能(感覚機能)と三次機能(生体調節機能)に関する研究を実施した.本研究は,分析化学的手法による詳細な解析を行うことで,現在まで継承されてきた生産方法の必然性を食品機能化学的に解明し,地域文化の「暗黙知」を市場価値の「形式知」へ科学的に変換することを目的としたものである. 二次機能については,碁石茶を味覚センサーにて評価し,味覚データの視覚化を行った.その結果,碁石茶の味覚データは,紅茶,緑茶,ほうじ茶,ウーロン茶の味覚データのいずれとも一致せず,酸味に秀でている一方で,渋味に乏しいという結果となった.これまで碁石茶の味に関する定量的なデータは存在しなかったことから,本研究結果は伝統的手法で生産された碁石茶の味を視覚的,かつ定量的に示す重要なデータとなり得ると考えられた. 三次機能については,抗酸化成分の追究を行った.過去の研究において,碁石茶が抗酸化活性(スーパーオキシドアニオン消去活性)を示すことは明らかとなっているが,その関与成分については不明なままであった.また,好気的発酵と嫌気的発酵を経て製造される碁石茶の場合,茶葉中のカテキン類含量は緑茶ほど高くなく,抗酸化活性へのカテキン類の寄与率も5%程度と非常に低いことが明らかとなっている.従って,碁石茶には発酵茶に特徴的な抗酸化成分が含まれている可能性が高いと推察された.そこで今年度は,碁石茶を液-液分配に供し,酢酸エチル層を得た.この酢酸エチル層が高い抗酸化活性を示すことが判明したため,そこに含まれる抗酸化成分の解明に取り組んだ.その結果,ピロガロールの存在が明らかとなった.また,碁石茶製造工程中の抗酸化活性とピロガロール含量の推移は類似していたことから,ピロガロールが碁石茶中に含まれる主要抗酸化成分の一つであると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度の研究計画通り,碁石茶の味覚データを収集し,他の茶の味との差別化を図ることができた.また,当初は平成24年度以降に実施予定であった機能性に関する研究を前倒しで実施し,抗酸化成分について一定の成果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は,碁石茶の機能性の解明を重点的に行う.既に抗酸化活性については研究計画を前倒しして実施しており,引き続き抗酸化成分の全容解明に取り組む.また,当初の予定通り,その他の機能性(血圧上昇抑制作用,脂肪代謝調節機能)に関する研究も開始する.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度(平成23年度)は,依頼分析費が当初の見積もりよりも低く抑えられたこと,ならびに依頼分析にかかわる研究打ち合わせが,電話及びメールによる事前のやり取りで十分機能を果たし,旅費が低く抑えられたことから,残額が生じた. 平成24年度以降は,機能性評価に研究の重点を置くことから,機能性評価用のキット類や機能性成分の分画に用いるHPLCカラム等,比較的高価な消耗品の購入が必要となる.昨年度に生じた残額はこれら消耗品の購入経費の補足に充てる.また,研究成果を積極的に世間に発信するため,成果発表用の旅費や印刷費を計上することとする.
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