研究課題/領域番号 |
23500961
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
岩崎 信明 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (70251006)
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研究分担者 |
大和田 浩子 茨城キリスト教大学, 生活科学部, 教授 (90316414)
大戸 達之 筑波大学, 医学医療系, 講師 (60344892)
沼野 智一 首都大学東京, その他の研究科, 准教授 (10399511)
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キーワード | エネルギー代謝量 / 運動機能障害 / 小児 / 間接熱量測定装置 / 開放型キャノピー / 身体計測法 |
研究概要 |
本研究では脳性麻痺など運動機能障害を有する小児に対して、個別の栄養管理法を確立するために、推定エネルギー必要量のより正確な算定方法の開発を目標とする。 1)昨年度に開発した間接熱量測定装置を用いた開放型キャノピーによる希釈法によってエネルギー代謝量を測定する方法に加え、測定と同時に心拍数を測定することによる測定値の補正を試みた。対象は経管栄養チューブまたは胃瘻から注入によって栄養摂取が行われている重度の脳性麻痺で、運動機能は大島の分類では1、GMFCSではレベルVである。安静時エネルギー代謝量(REE)はう希釈法によって測定した。安静時エネルギー代謝量測定時の平均心拍数を測定した。注入量から1日摂取エネルギー量(IE)を算出した。永井らの痙直型脳性麻痺における毎分の心拍数(/分)とエネルギー代謝量(Kcal/kg/分)との一次回帰のデータをもとにその傾きを0.000426と想定した。24時間心拍数の測定結果から、補正をおこない、24時間エネルギー代謝量を計算した。補正値はREEの4.8~12.6%で、補正によりREE とIEとの誤差が18±15% から、7.2±8.3%に縮小した。このことから心拍数による補正は個々の推定エネルギー必要量を算出する場合に有用な手段であると考えられた。 2)二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)について、脂肪量や除脂肪量などの身体組成に関して計測をおこなった。脂肪量比(%FAT)は23.4±8.3%と低値であった。 3)本研究における重要な柱である二重標識水(Doubly-Labelled Water:DLW)法について導入に向けた基礎的な分析をおこなった。尿の採取による分析を予定したが、指示による排尿が困難であったため、採血による検体採取に変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個別の栄養管理法を確立するために、推定エネルギー必要量のより正確な算定方法の開発を目標とする。そして、本研究では一般に広く用いることができる方法の開発に重点をおいている。近年、多くの病院において間接型熱量測定装置が導入されてきたことから、本法をを用いた方法を開発してきた。特に我々は被検者に負担の少ない開放型キャノピーによる希釈法での測定を行い有用性を研究の「初年度移行強調してきた。しかし、多くの施設ではマスクを用いた方法がなされており開放型キャノピーによる希釈法の導入は困難と考えられた。このため、マスク法においても比較的正確な測定値が得られるようにするために、本年度は心拍数による補正について検討した。その結果、この方法を用いることで、測定時の興奮や睡眠などの状況の違いによるエネルギー代謝量の変動について有効に補正ができることが明らかになった。また、もっとも正確とされている二重標識水(Doubly-Labelled Water:DLW)法の導入に向けた基礎的検討がなれた。身体測定では二重エネルギーX線吸収法(DEXA法)を実際に臨床導入し、脂肪量、脂肪量比を算出することが可能となった。このように、本年度に基礎的な部分の開発がすべて終了し、次年度に実際に臨床応用し計測値の分析をおこなうことが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はDEXA法から得られた結果と補正によって求めた24時間エネルギー代謝量とIEとの差異との関係について検討する。さらに、DLW法を臨床面で導入し、補正によって求めた24時間エネルギー代謝量の有用性について検討していく。それらの検討によって、簡便で広く普及している測定方法である間接熱量測定装置を用いる方法においても、個々の症例の24時間エネルギー代謝量が比較的正確に算出できるものと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度から二重標識水(Doubly-Labelled Water:DLW)法を本格的に導入していく。この二重標識水の購入とその分析を中心として研究費を投入する。特にこの部分の予算が高額となることから、これまでの研究においては費用の支出をなるべくおさえており、十分に基礎的検討が終了した次年度から導入を計画している。
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