研究課題/領域番号 |
23500964
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
増田 修一 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (40336657)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トランス脂肪酸 / グリシドール脂肪酸エステル / 食用油 / 加熱調理 / 遺伝毒性 / コメットアッセイ / 小核試験 |
研究概要 |
現在、食用油中にトランス脂肪酸(TFA)及びグリシドール脂肪酸エステル(GFE)が混入しており、ヒトに対する健康影響が社会問題となっている。TFAはマーガリン等の硬化油に含まれ、その製造工程において不飽和脂肪酸から飽和脂肪酸を生成させるための水素化により生成するといわれている。TFAは心臓疾患や動脈硬化との関連が指摘されている。また、最近、食用油中のGFEのヒトに対する健康影響が問題となっている。GFEは構造内にグリシドール骨格を持ち、グリシドールは国際がん研究機関により、「ヒトに対して発ガン危険性あり(2A)」に分類されている。したがって、生体内においてGFEからグリシドールが遊離し、発がん性を示すことがと考えられる。以上のことより、食品中のTFA及びGFEのヒトに対するリスク評価を行うことは重要である。本年度は、市販の9種類の食用油(サラダ油、キャノーラ油、べに花油、調合油、大豆油、オリーブ油、米油、コーン油、綿実油)中のTFA及びGFE量を測定し、さらに実際の加熱調理過程において両物質量が変動するか検討した。各食用油中のTFA量は0.3~1.93(g/100 g)の範囲であり、1日摂取エネルギー換算で世界保健機関(WHO)の定めた基準値以下であった。DAG油以外の各食用油を180℃で加熱処理したところ、TFA量は減少する傾向を示した。食用油中のGFE量を測定したところ、DAG油に最も多く含有していることを確認した。また、他の市販食用油中にもGFEが微量に検出された。さらに、各食用油を180℃で加熱したところ、GE量は減少する傾向を示した。以上の結果より、市販の食用油中にはTFA、GEが含有されており、通常の調理過程では、TFA及びGFE量は減少する傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、市販の9種類の食用油(サラダ油、キャノーラ油、べに花油、調合油、大豆油、オリーブ油、米油、コーン油、綿実油)等食品中のトランス脂肪酸(TFA)及びグリシドール脂肪酸エステル(GFE)を分析し、さらに実際の加熱調理過程において両物質量が変動するか否か検討を行った。その結果、各食用油中のTFA量が明らかになった。また、各食用油を実際の加熱調理温度である180℃で加熱処理したところ、TFA量は減少する傾向を示した。次に各食用油中のGFE量を測定したところ、DAG油中に最も多く含有していることを確認した。他の市販食用油中については微量に含まれることを確認し、特にこめ油に多く含まれていることが明らかになった。さらに、180℃で各食用油を加熱処理したところ、GFE量は減少する傾向を示した。以上の結果より、当初の計画の通りに食用油中のTFA及びGFE量を明らかにすることができ、また加熱調理によるTFA及びGFE含有量への影響についても確認することができた。しかし、サンプル数を少ないことから、さらに増やして食用油全体のついての含有量をを明らかにする必要がある。また、食用油以外の食品についても検討することも重要である。以上のことより、達成度としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度では、9種類の食用油中のトランス脂肪酸(TFA)及びグリシドール脂肪酸エステル(GFE)を分析し、さらに実際の加熱調理過程において両物質量が変動するか検討を行った。その結果、各食用油中のTFA及びGFE量が明らかになり、また各食用油を180℃で加熱処理したところ、TFA及びGFE量が減少する傾向を確認した。食用油中のTFA及びGFE量が明らかにしたことから、今後は両物質のヒト生体内における毒性を各種試験法を用いて検定する。また、両物質を同時に摂取させた場合の複合毒性についても調べる。試験方法として、TFA及びGFEの遺伝毒性をエームス試験法を用いて検定し、各種薬物代謝酵素や脂肪酸分解酵素であるリパーゼを添加して、両物質の代謝物、分解物の毒性についても調べる。さらに、TFA及びGFEを実験動物に投与し、血液、肝臓、腎臓等の生体試料を採取し、in vivoにおける遺伝毒性を小核試験、コメットアッセイで評価する。また、投与一定時間後に血液、尿、各種臓器を採取し、生体試料中のTFA、GFE及びそれらの代謝物をGC-FID、GC/MS、LC/MS/MS等の機器分析を用いて測定する。以上の研究を行うことで、両物質のヒトへの摂取・曝露量評価に加え、毒性評価を行うことで、ヒトに対する両物質のリスク評価ができると確信している。問題点としては、TFA及びGFEの代謝物等の機器分析については、研究連携者である米谷民雄先生からご指導を頂く。また、遺伝毒性試験については、現在、当食品衛生学研究室と共同研究を行っている財団法人食品農医薬品安全性評価センター及びクミアイ化学工業株式会社と情報交換を行い、問題点の確認、是正、試験結果の判定を検定して頂く。また、実際の試料の毒性について同センターと同じ方法で試験をすることでクロスチェックを行い、データの相互評価、整合性を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、食用油等食用油中のトランス脂肪酸(TFA)及びグリシドール脂肪酸エステル(GFE)量を継続して分析する。また、加熱調理後の食品中及び生体内での分解・代謝物量を測定することから、これら物質の抽出操作において固相抽出や溶媒抽出を行う。この際、試験するサンプル数に応じて固相抽出カラムが必要である。また、両物質及び分解・代謝物量をGC/FID、GC/MS及びLC/MS/MS等の機器分析を用いて測定することから、各化学物質の測定に応じた分析用カラム購入する必要がある。また、TFA及びGFEの遺伝毒性を検定する上で、エームス試験、小核試験、コメットアッセイ等各種試験法を実施する。その際、各試験ごとに必要な消耗品を購入する。また、in vivo試験を実施する上でラットやマウス等の実験動物が必要であり、濃度依存的な影響、また再現性の確認を行うことを考慮して、購入する。さらに、その他、ガラス器具、一般プラスチック製品、一般試薬については通常使用する実験用消耗品として購入する。旅費としては、毎年、環境変異原学会、薬学会等に参加して得られた研究成果を発表する。また、人件費・謝金については、実験補助やデータ整理をしてもらい、研究を効率よく実施する上で必要である。以上、研究内容と研究費との関係より、本研究を行う際の研究経費として、物品費、旅費、人件費・謝金を計上する。
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