研究課題
グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールの変異原性をTA98及びTA100を用いるエームス試験で調べた。また、両物質をICRマウス(6週齢・♂)に解剖24及び3時間前の2回経口投与(各2.7 mmol/kg.b.w.)し、血液、骨髄細胞、肝臓、腎臓、脳を採取した。各臓器におけるDNA損傷性はコメットアッセイを用いて、骨髄細胞における染色体異常誘発性は小核試験を用いて調べた。さらに、バーベキューとフライパンで加熱調理した食肉中のグリシドール脂肪酸エステル量をLC/MS/MSを用いて測定した。グリシドール脂肪酸エステル及びグリシドールはエームス試験において、TA100株で変異原性を示した。また、両物質をマウスに経口投与して、肝臓、腎臓、脳、血液におけるDNA損傷性をコメットアッセイを用いて調べたところ、いずれの臓器においてもDNA損傷性が有意に増加した。また、骨髄細胞における小核誘発能を調べたところ、グリシドール脂肪酸エステル投与群では有意な誘発能は見られなかったが、上昇傾向を示した。一方、グリシドール投与群では、有意な小核誘発能がみられた。バーベキュー及びフライパンで加熱調理した食肉中のグリシドール脂肪酸エステル量をLC/MS/MSを用いて測定したところ、いずれの加熱法でもグリシドール脂肪酸エステルが検出された。特に、高温で加熱調理するバーベキューではフライパンでの加熱に比べ、グリシドール脂肪酸エステルの生成量が増加することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度では、グリシドール脂肪酸エステル及びその生体内での分解物であるグリシドールの安全性を各種遺伝毒性試験を用いて評価した。また、加熱処理した食用油及び加熱調理した食肉中のグリシドール脂肪酸エステル量をLC/MS/MSを用いて調べた。その結果、グリシドール脂肪酸エステルが各種遺伝毒性試験において遺伝毒性を示すことが確認できた。また、市販の各種食用油およびDAG油中のグリシドール脂肪酸エステル含量が測定したところ、DAG油に多く含まれていることを確認できた。さらに、これらの油を加熱処理したところ、グリシドール脂肪酸エステル量が減少する傾向がみられた。バーベキュー及びフライパンで加熱調理した食肉中におけるグリシドール脂肪酸エステル量をLC/MS/MS法を用いて測定したところ、いずれの加熱調理法においてもグリシドール脂肪酸エステルが検出された。特に、高温での加熱調理法であるバーベキューではフライパンでの加熱に比べ、グリシドール脂肪酸エステル量が増加することを確認した。これらの成果は、平成24年度の当初の研究計画においておおむね順調に進展しており、特に食用油以外の食品である加熱食肉中にグリシドール脂肪酸エステルに含まれることを確認できたことは新規の成果であるといえ、平成25年度においてもさらに検討する予定である。
平成24年度の研究成果より、グリシドール脂肪酸エステル及びその分解物であるグリシドールは遺伝毒性を示すことが明らかになった。また、日常的に調理に使用している食用油中にグリシドール脂肪酸エステルが含まれるが、通常の加熱調理条件では減少することが確認できた。さらに、食肉の高温加熱調理によりグリシドール脂肪酸エステルが生成することを明らかにした。これらの成果を平成25年度ではさらに推進させるために、グリシドール脂肪酸エステルの遺伝毒性および発がんプロモーション活性を様々な試験系で検定する。また、グリシドール脂肪酸エステルの毒性を抑制する物質を他の植物食品群から探索する。さらに様々な加熱調理条件により食肉を処理して、グリシドール脂肪酸エステルの生成量が変動するか否かを検討する。これらの成果から、グリシドール脂肪酸エステルの毒性およびヒトの日常的な曝露量が明らかになり、グリシドール脂肪酸エステルのヒトに対するリスク評価が可能になると確信している。
平成25年度では、グリシドール脂肪酸エステルの遺伝毒性を評価するために、各種遺伝毒性試験に必要な消耗品や試薬類等を購入する。また、in vivoにおける遺伝毒性を評価する上で実験動物を購入する予定である。さらに、平成25年度では、グリシドール脂肪酸エステルの発がんプロモーション作用を検定するために新たな試験系を構築することから、平成24年度で使用する予定であった研究費を平成25年度に移行させた。この新規試験系を実施する上で、細胞培養関係の試薬、血清および消耗品等を購入する。さらに、加熱処理した食肉中のグリシドール脂肪酸エステル量を測定するために、固相抽出カラム、LC/MS用有機溶媒、LC/MS/MS測定用カラム等を購入する予定である。得られた成果については、学会発表や論文投稿することからこれらの経費についても研究費から算出する予定である。以上、平成25年度の研究費の使用について、グリシドール脂肪酸エステルのヒトに対するリスクを評価する上で有効に活用する。
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