研究課題/領域番号 |
23500966
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
佐藤 健司 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00202094)
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研究分担者 |
重村 泰毅 大阪夕陽丘学園短期大学, その他部局等, 助手 (20373178)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コラーゲン / コラーゲン由来ペプチド / Pro-Hyp / 線維芽細胞 / 創傷治癒 / 皮膚 / 創傷治癒 / ペプチド |
研究概要 |
マウスの片方の耳にDNFB (dinitrofluorobenzene) を塗布し炎症を誘発した。炎症および非炎症側の耳を磨砕後75%エタノールで抽出し、抽出物中のPro-Hyp, Hyp-Gly, Gly-Pro-HypをLC-MS/MS法により定量した。その結果、炎症を引き起こした耳のみでPro-Hyp, Gly-Pro-Hypが経時的に増加していた。これまでの申請者の研究でPro-Hypはコラーゲンペプチド摂取後、ヒト末梢血に存在し、また線維芽細胞の増殖促進活性を持つことが明らかになっている。そのため、炎症により組織損傷が生じた場合、内因性のコラーゲンの分解によりPro-Hypが生じ、生じたPro-Hypが線維芽細胞の増殖を促進することにより創傷治癒が促進すると考察できる。また食事由来のPro-Hypもこの修復貴稿を促進することで創傷治癒を促進できると考えられる。 さらにマウス皮膚から遊走してきた初代培養線維芽細胞はPro-Hypを細胞内に取り込み、増速が促進されるが、継代によりこれらの性質が失われることを見いだした。この現象は、線維芽細胞による過剰なコラーゲン産生を抑制するメカニズムである可能性がある。すなわち損傷部位に遊走してきた線維芽細胞は内因性および食事由来のPro-Hypにより増殖が促進され、創傷治癒にあたるが、増殖を繰り返すとこの性質を失い、過剰なコラーゲン産生が抑制されると考えられる。また本研究によりコラーゲン由来ペプチドは細胞内に取り込まれて働く事が示唆され、新しい細胞への情報伝達メカニズムの存在が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた、炎症による内因性コラーゲンペプチド、特に食事由来で血中に移行することが知られているPro-Hypの生成をDNFB-誘発耳炎症マウスを用いて証明することができた。一方、13C-Pro-Hypを用いた食事由来Pro-Hypの損傷部位への移行は、13C誘導体の入手の遅れで今年度には間に合わず、24年度に行う予定である。一方、24年度に予定していた細胞へのPro-Hypの取り込みと増殖促進効果に関してデーターを得ることができた。皮膚から遊走してきた線維芽細胞と継代細胞でPro-Hypの取り込みと細胞常食効果が異なることを見いだした。この成果は、線維芽細胞による創傷治癒の過剰なコラーゲン産生の抑制を説明できる可能性があり、また、ペプチドが細胞内に取り込まれ作用するという新しい情報伝達システムの存在を示すものであり、有益な知見であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、食事由来コラーゲンペプチドPro-Hypが炎症部位に集まるかを明らかにする。内因性と食事由来のPro-Hypを区別するため経口摂取させるPro-Hypは13Cでラベルする。23年度の研究で確立した手法で炎症・非炎症耳からペプチドを抽出し、LC-MS/MSにより両者を同時に定量する。さらに炎症耳で23年度で調べたコラーゲンペプチド以外に内因性のペプチドが生成していないかについても検討する。具体的には抽出物をサイズ排除クロマトグラフィーで分画し、さらにAccQ試薬 (6-aminoquinolyl-N-hydroxysuccinimidyl carbamate)で誘導化し、生じた蛍光物質をHPLCで分離し、ESI-MS/MSにより同定を行う。 さらに、線維芽細胞はプラスチックプレート上とコラーゲン上では増殖性が大きく異なることが知られている。23年度のPro-Hypの線維芽細胞への取り込みはプラスチック上での培養結果である。今年度はコラーゲンゲル上でのPro-Hypの取り込みを検討する。その際、細胞を回収するためにコラーゲンをコラーゲナーゼで分解する。その際に生じる可能性のあるコラーゲンペプチドの影響を最小にするため、取り込みに用いるPro-Hypは13Cでラベルし、LC-MS/MSにより添加Pro-Hypの特異的な検出を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度も備品の購入計画はなく(LC-MS/MS, ペプチド合成装置、HPLC等は保有する)。予定通り試薬・カラム・細胞関係の試薬を購入する。また成果の発表と共同研究者との打ち合わせのための旅費を予定通り使用する。本年度のInternational Society for Neutraceuticals and Functional Foodsでコラーゲンの機能に関するせセッションを持つ予定であり、その中でこれまでの成果を発表する予定である。
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