研究課題
23年度の研究で,マウス初代線維芽細胞がPro-Hyp(プロリルハイドロキシプロリン)を取り込むことを細胞抽出物のペプチド型Hypの増加で検出している。24年度は線維芽細胞へのPro-Hyp,Hyp-Glyの取り込みをペプチド型Hypの定量のみでなく,LC-MS/MSでも測定した。その結果,ペプチド型のHyp量に比べPro-Hyp, Hyp-Gly量は低く,特にHyp-Glyは痕跡程度しか検出されなかった。この結果は加水分解でHypを生じる他の成分が細胞内で生成している可能性を示唆する。細胞内に取り込まれたペプチドの代謝を明らかにするため線維芽細胞の抽出物を6-aminoquinolyl-N-hydroxysuccinimidyl carbamate (AccQ)誘導化後,逆相HPLCで分離した。蛍光を持つ誘導物がHyp-Gly添加により増加していた。そのMS解析から,モノアミンが生成している可能性が示唆された。このような報告例はなく,あらたな細胞内シグナリング経路に関係している可能性がある。しかし,これらのモノアミンは加水分解してもHypを生成しないため,ジケトピペラジン等の環状ペプチドが生成している可能性がある。またこの実験で用いたマウス初代培養線維芽細胞は幹細胞マーカーである低親和性神経増殖因子受容体の発現量が高く,継代と共に減少することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的の一つである内因性及び外因性コラーゲンペプチド (Pro-Hyp, Hyp-Gly)がどのようなメカニズムにより線維芽細胞の増殖を促進するかという点に関して新しい知見が得られた。24年度の研究により,初代培養マウス線維芽細胞に取り込まれたPro-Hyp, Hyp-Glyが,さらに代謝を受けている事を見出すことができた。さらに培地に Hyp-Glyを添加した線維芽細胞の中にモノアミンと考えられる成分の増加を見出した。これまで,動物ではヒトと比べ,コラーゲンペプチドを摂取後の血中コラーゲンペプチド濃度が低いにもかかわらず,傷の修復等の効果が見られることを説明できる可能性がある。またPro-HypやHyp-Glyのような短鎖ペプチドが,どのように細胞の増殖に係わるかを解明する手がかりとなる。問題点としては,細胞内に加水分解しいてHypを生成する代謝物が未同定であることにある。また当初予定していた食事由来性コラーゲンペプチドの皮膚の損傷部への移行については上記の問題が解明して,代謝物が同定できた後に検討する。
まず,24年度で同定できなかったHyp-Gly添加時に線維芽細胞に取り込まれたペプチドで,加水分解によりHypを生じるが,Hyp-Glyでない成分の同定を考える。24年度におこなったアミノ基のラベルによりHypを含む代謝ペプチドが検出できなかったため,環状分子であるジケトピペラジンの可能性を考えている。この点を明らかにするため,強カチオン交換樹脂による分画をおこない,アミノ基を持たない非吸着画分をHPLCとESI-MSで分析し,Hyp-Glyの添加により増加する成分の分離・同定を試みる。さらに,24年度の研究で存在が示唆されたモノアミンの存在をMSから予想される標準物と比較することで,その存在を確認する。これらの情報を得た後,13Cで標識した外因性コラーゲンペプチドが皮膚の損傷部に到達することを確認する。また細胞内に取り込まれた代謝成分を線維芽細胞に加え,細胞増殖等の作用が存在するかを明らかにする。
該当なし
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J. Agric. Food Chem.
巻: 60 ページ: 5128-5133
10.1021/jf300497p
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