研究課題/領域番号 |
23500967
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
渡辺 敏明 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (30091846)
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研究分担者 |
福井 徹 兵庫県立大学, 環境人間学部, 研究員 (50425443)
榎原 周平 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助教 (10372856)
澤村 弘美 兵庫県立大学, 環境人間学部, 助手 (30555371)
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キーワード | ビオチン / 異化代謝物 / アビジン / 尿 / 血清 / HPLC |
研究概要 |
本年度においては、尿および血液などの生体試料の測定において不可欠な前処理法についての検討を行った。まず水溶液中のカルボン酸を蛍光標識することによって、ビオチン、ビオチンスルフォキシド、ビスノルビオチンおよび、3-ヒドロキシイソ吉草酸(3-HIA)の混合水溶液を20~40pgの検出感度で分離可能とするHPLC測定条件を確立し、前処理について、以下の項目について検討をした。尿前処理法としては、合成吸着剤(セパビーズSP850)、アビジン樹脂および固相抽出を試みた。アビジン樹脂による前処理法は、アビジンとビオチン化合物との特異的で強固な結合を利用したもので、夾雑物を容易に除去することができ、かつ高感度化することが可能である。まずアビジンとの結合前に尿中の目的物を蛍光標識することによって、アビジンとの結合を解離させやすくした。標識化に用いた尿量よりも、溶出液量を少量にし、最終的に濃縮し、高感度化を図った。結果として、夾雑物は充分に除去できたが、再現性が十分でなかった。これには内部標準物質が不可欠であるが、他のビオチン類似物の入手が困難であった。アビジンとビオチン化合物との結合解離は従来から報告されている6Mグアニジンでは不十分で、アビジンの変性によるが必要であった。このため樹脂の再利用できない。この測定法で尿サンプルを測定し、ビオチンおよびビオチン異化代謝物を同時に測定することができたが、さらに検討が必要である。なお、血清の前処理法としては、除タンパクが必要である。ただし、除タンパク剤を用いた場合には、蛍光標識に影響しない試薬の選定と希釈によるその後の濃縮の課題であるが、食品分析にも応用が可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定物質であるビオチンの標識およびHPLCでの測定条件については確立することができた。しかしながら、尿および血液などの生体試料については、タンパク質や電解質などの夾雑物質が含まれているために、ピークの確認が十分にできなった。また除タンパクによって、夾雑物質などを除去すると、濃度が低いために検出が十分にできなかった。これまでに3通りの前処理法を検討し、アビジン樹脂による方法である程度の結果が得られるようになった。このようなことから、生体試料の測定までできずに研究の達成が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度予定していた生体試料における測定法の確立が十分でない。このため、まず生体試料でのHPLC測定法の確立について再度検討を進める。これと並行して、尿や血清で確立した前処理法を応用し、食品および食事を試料としたビオチンおよびビオチン異化産物の測定法を確立する。 本研究室でこれまでに微生物学的測定法で分析した食品の凍結サンプルについて、HPLC測定法で分析する。得られたデータについて、微生物学的測定法とHPLC法とを比較検討する。また、女子学生を対象として、食事、血液および尿を採取し、ビオチンおよびビオチン異化生成物(産物)を微生物学的定量法およびHPLC法で測定し、ビオチンの栄養状態との関連について調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予定していたビオチンおよびビオチン異化代謝物のHPLCでの同時測定法については、実用的な方法としてはまだ十分でなく、ヒトの尿および血清サンプルを使用した分析まで至っていない。このためこれらの分析に必要な試薬を購入しなかったことにより、291,395円を次年度へ繰越ことになった。また繰越の一部は購入物品の支払いが遅れたことによる。この結果、次年度の研究は、24年度使用額291,395円、25年度1,200,000円を合わせた1,491,395円で実施する。今年度予定していたビオチンおよびビオチン異化代謝物のHPLC測定法を確立するために、24年度使用額については、分析試薬などの物品費として使用する。
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