研究実績の概要 |
これまでビオチンおよび異化代謝物の標準物質を用いて、測定法の条件を検討してきた。今年度はビオチン負荷試料やビオチン含量が高い食品を用いて検討を行った。Biotin(BIO), Biotinsulfoxide(BSO), Biotinsulfon(BSF), Bisnorbiotin(BNB),及びビオチン欠乏の早期指標とされる3-Hydroxyisovaleric acd(3-HIA)標準溶液を用いてDMEQ-Hによる蛍光標識とHPLCの分離条件の確立を試みた。この結果、合成低分子吸着剤、イオン交換樹脂とC18固相抽出を組み合わせた測定法がもっとも利用可能であった。この方法は、例えば尿をセパビーズ(吸着剤)に通液 → 蒸留水洗浄 → 70%エタノール溶出 →減圧乾固 →1/15Mリン酸緩衝液(pH7)溶解 → Dowex1-X2に通液 → 水洗 → 0.012Mギ酸溶出 → C18固相通液 → 水洗 → メタノール溶出 → 減圧乾固 → 蒸留水溶解 → 蛍光標識 → HPLCインジェクションするものである。前処理は操作が増えるに従って、かなりの夾雑物が除去されるが、標準法として確立するためには、まだ不十分である。また、目的物質の検出感度を上げるためには現段階では試料の濃縮が不可欠であるが、夾雑物もまた濃縮されることとなり、妨害ピークとなる。 HPLC法を十分に確立させることができなかったため、HPLC法の代用となる測定法について検討を行った。現在使用されている方法としては、微生物学的定量法である比濁法、寒天プレート法、酵素免疫学測定法(免疫法)がある。災害食およびビオチンサプリメントを摂取した後、微生物学的定量法による尿中ビオチン量は、日常時の平均排泄量は1.09mol/mol Creであったが、負荷後の平均排泄量は167mol/mol Creであった。しかしこれらの測定結果から標準法を提案するには至らなかった。
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